バレエを中心としたレンタル衣装を手掛ける株式会社アトリエヨシノ(吉野勝恵代表取締役/与瀬)は今春、業界ではめずらしい契約ダンサーを2人採用した。国内では企業がスポンサーになりバレエダンサーを雇う例はほとんどないようで、「業界ではおそらく初めての試み」と吉野絢子副社長は話す。
外国では、バレエダンサーは国立のバレエ団をはじめ福利厚生や給料が充実していることが多い。しかし国内は違うと吉野副社長は続ける。「国内ではバレエ一本で食べていける業界ではない。それに対して足掛かりになるような雇用形態を作り出せないか、ダンサーのセカンドキャリアを支援する中で独自にできることはないか」と考え、業界の発展も願い契約ダンサーの採用に踏み切った。昨年、相模湖地域が「バレエのまち」を掲げてまちづくりをスタートさせたのも理由の一つと言う。
募集は昨秋に行われ、約40人の応募があった。その中から選ばれたのが、長澤朱紗さんと阿部琴羽さん。2人は3月4日に入社し、契約社員として文化事業部でイベントの企画や運営に携わっている。勤務の中にレッスンの時間が含まれており、PR活動にも積極的に参加していくという。吉野副社長は「裏方の勉強をして踊るだけではない、多角的なものの見方ができる真のバレエプロフェッショナルを目指してほしい」と期待する。
「やってみたい」
長澤さんは埼玉県出身の29歳。バレエは3歳の時に始めた。就職サイトに登録し、バレエの道を諦めかけていた時にSNSで募集を知った。「年齢や実力を考えてこのままプロへの道を探求しても良いのか不安があった」と長澤さん。葛藤で心が揺れ動いていたが「やってみたい」という気持ちを親も後押ししてくれ応募を決めた。
実際に働き始めて「今までは踊りメインで裏方の事もなんとなく分かっていたけど、舞台の裏にはこんなにたくさんの人がいて、滞りなく幕が開くのはすごいことだと感じた」と感心する。
これからの目標については「児童文学作品を舞台にしたいという夢のために、まずは古典作品を1から勉強して子どもに向けた全幕の舞台に関わりたい。古典の全幕舞台にダンサーとして立ち、それを裏方にも活かしていきたい」と意気込む。
「活躍したい」
阿部さんは栃木県出身。19歳でバレエ歴は14年になる。2022年には同社のジュニアモデルを務めた。採用が決まるまでの1年、いろいろなオーディションに挑戦するも良い結果を得られず、就職するか迷っていたという。「一般社員としてアトリエヨシノに入社したいなと思って募集を探してみたりもした」と笑う。そんな折、募集を見つけ「私にぴったり」と迷わず応募した。
入社して2カ月ほどが経ち「いろいろな仕事を見て舞台ができるまでを学んでいる。服飾を勉強してきたのでいろいろな衣装に囲まれた空間でお仕事できるのにワクワクしている」と声が弾む。
そんな阿部さんの目標は「バレエダンサーとして活躍したい。私が出るイベントを見てくれた人がバレエを好きになったり、始めたりしてくれたらうれしい。マルチに活躍できる真のバレエプロフェッショナルになりたい」と目標を掲げる。
広がりを切望
新たなスタートを切った2人に吉野副社長は「バレエをやっているだけでは経験できないことを経験させてあげたい。(契約ダンサーとしての)恩恵を大いに受けて周りに広げていってほしい」と話すと、業界の未来にも触れ、「企業の所属ダンサーが増えていったら良い。バレエだけでなく芸術界全体に広がれば、芸術が身近になり日常に溶け込んでいくことにもなる」と次への展開を切望した。
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