新型コロナにより変容する働き方。その影響で、自然豊かでありながら都心へのアクセスもいい藤野地域へ移住を検討する人が増えている。同地域の移住相談を受ける藤野観光協会によると、第1回の緊急事態宣言明けから増え始め、2月末の時点で昨年度の相談件数を12件超える124件の相談が寄せられたという。「ニューノーマル時代」を考える契機の一つとして、昨年実際に都内から日連に越してきた高橋正さん(46)・千里さん(36)夫妻に移住までの経緯や課題を聞いてみた。
高橋さんは、老舗洋菓子メーカー「ヨックモック」(東京都千代田区)でブランドマーケティングに携わっている。移住の最大の決め手として挙げるのは、「勤めている会社の方向性や理解」。昨年の緊急事態宣言時、暮らしていたのは世田谷区のマンションで、会社に通わなくてもオンライン会議ツールなどを利用し、在宅ワークでも問題なく進められた。しかし、兼ねてから居住コストのかかる都内ではなく、自然の中の広い家で一人娘・はなちゃん(3)を育てたいという思いを千里さんと共有していた。気がかりだったのは、コロナ収束後、従来の出社体制に戻るのかという点だ。巷では、大手企業が都心のオフィスを引き払い、地方に移転し在宅ワークを主流とするニュースがマスコミを騒がせていた。自分の会社はどうなるのか。そんなとき、会社からコロナ収束後も働き方改革の一環として在宅ワークを認める方針が出された。会社の方向性が明確になったこの時、郊外移住の最大の課題が解決し、引っ越し先探しは加速した。
高橋夫妻が選んだのは、日連にある築47年の一軒家。敷地は約500平方メートルで、庭もあり自然環境も申し分ない。週に数回出社するのに、藤野駅から会社までは片道約1時40分。決して短くはないが、電車では座れるため苦ではないという。近くに自然教育に力を入れる学校があることも魅力的で、懸念点だったはなちゃんの保育園問題や物件探しもタイミングに恵まれた。
藤野地区に越してきて数カ月。移動用に購入した車や通販などがあるので、「大きな不便は感じないし、少しくらいの不便は楽しんでいる」と高橋さん。移住者同士のコミュニティもあり、近所の住民も困ったことがないかよく尋ねてくれる。以前は看護師として働いており、最近近所の福祉施設での就職が決まった千里さんは、今庭にはなちゃん用のブランコを作ろうか検討中だ。「以前だったらブランコのある公園を探すしかなかったけど、ここなら『作る』という選択肢もある。移住して、生活の価値観が変わった」と千里さん。
高橋夫妻は今、都心とは違う緩やかな時間の使い方を楽しんでいる。
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