町田市立博物館より【8】 博物館の怪談―ガラス編 学芸員 齊藤晴子
今回もまた博物館の裏側のお話です。「怪談」といってもオバケは出てきませんのでご安心ください。とは言え私たち学芸員にとっては、実体のないオバケよりもはるかに身の毛のよだつ怖〜いお話です。
私の専門分野はガラス工芸なので、まずはガラスに関する怖いお話をお聞かせいたしましょう。往年のテレビ番組「まんが日本昔ばなし」の怖い話の時のBGMを頭の中で響かせながらお読みください(語りはもちろん市原悦子さんの声で)。
オバケの仕業!?
とあるお宅でのこと。誰もいないはずの隣の部屋から、パリッというかすかな音が聞こえてきました。何事だろうといぶかしんだご主人が部屋をのぞいてみると、そこには案の定、誰の姿もありませんでしたが、よく見るとなんと床の間に大切に飾られていた江戸時代の薄手の和ガラスが粉々に砕けていたそうな・・・。
キャ――!!目に見えないオバケの仕業!?・・・なわけありませんね。
細心の注意
種明かしをすれば、江戸時代中頃、日本のガラス製造技術が未熟な時代に作られた薄手のガラス製品の中には、徐冷(じょれい=ガラスをゆっくりと冷ますことで歪みを取り除く工程)が不十分なものがあり、温湿度の少しの変化やちょっとした刺激などで(あるいは場合によっては特に何もしなくても)割れてしまうことがあるのです。オバケのせいではなかった!
他にも、同じく江戸時代のガラスについては、扇風機の風に当てただけで割れたとか、夏の暑い日、クーラーの効いた部屋から暑い室外に持ち出したら割れたとか、別のバージョンの怖い話もあります。当館にも江戸時代中期と思われる薄手のガラス作品が所蔵されているので、これらの作品を取り扱う際には、いつもこの怪談(教訓?)を思い出しながら、細心の注意を払って扱うようにしています。
別の専門分野の学芸員と話をすると、それぞれの分野でまた違った怖い話があるそうなので、機会があったらまたこの紙面でご紹介できるかもしれません。ああ、くわばらくわばら。
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宮司の徒然 其の142町田天満宮 宮司 池田泉5月16日 |
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