JR町田駅近くの地場食材を扱う和食店「六九和(ろくわ)」。ロック好き、音楽好きの店主・中村康治さん(51)が妻と二人で切り盛りする店には、繊細な和食料理のイメージからは程遠いロックが鳴り響く。このほど、中村さんが”ぼっちロッカー康吉”としてCDデビュー。ようやく完成した一枚に自身の熱い思いを込めた。
アルバムのタイトルは『50すぎてデビューするなら普通は演歌だよね、だけど俺はロックでデビューしたいんだ』。「まさにタイトルそのまま」と話す中村さん。陽気でノリの良いロック、しっとり聞かせるバラード、社会に疑問を投げかけ、訴えるソウルフルな曲など様々な曲調の3曲を収録。中村さんが全曲作詞を担当した。「これは僕なりの革命。経験してきた想いを伝え、いつも助けてくれた音楽への恩返し。50歳を過ぎてデビューするには付加価値をつけたかった。それが演歌じゃなく、ロックってこと」と熱く語る。
歌を習い始めたのは42歳の頃。発声などを学ぶ上で、カラオケでなく、自分の曲で歌いたいという目標ができた。3年前、ちょうど店のオープンと同時にCD化に向け本格始動。「ボイトレの先生をはじめ、周りの人に支えられてきた。曲も素晴らしい曲をつけてくれた。まだまだだと思うけど、CDになって正直嬉しい」
病気に負けない
実は中村さんは「網膜色素変性症」という病気と20年間戦っている。夜に見えにくくなったり、視野が狭まっていく難病で、いずれは失明に至ることも。根本的な治療法はまだ見つかっていない。中村さんは「人はそれぞれ何かを背負って生きている。僕の場合はそれが目の障害。でも僕の場合は目だけ。手足が悪い人の分まで動くし、逆に誰かが僕の目の代わりをしてくれる。そんな社会になればいい」と話す。「だからこそ、しんみりするより楽しさを求めてバカな歌を歌う。自分が障害者だからできることだと思う。種を撒かなければ芽は出ない。同じ病気を持っている人、いろんな障害がある人たちにメッセージを届けたい」。好きなバンドのライブで歌とともにMC(曲と曲の間の演奏者たちの話)の力で元気をもらったという中村さん。それぞれの曲に、セリフを入れた。「録ってみたら歌よりもセリフの声が良かったなって思って。次にCDを出す時にはもっとセリフを増やそうかな」と笑う。
目が悪いせいで、バンドだと他のメンバーや機材とぶつかったりする不便があった。だから一人、ひとり「ぼっち」で戦う。「音楽よりも、自分の人生観みたいなものを感じてくれれば嬉しい。こうして一つの形になって、諦めないでよかった」
CDは一枚1200円で店頭で販売。売上金の一部は日本網膜色素変性症協会(網膜サポーター)と動物愛護団体へ寄付する。「平日昼はお店を閉めていますが、CD販売は正午から行っています」
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