町田市立博物館より44 お雑煮十人十色 学芸員 佐久間 かおる
みなさんのお家のお雑煮には何が入っていますか? 普通の具材、とお答えになる方が多いと思われますが、ちょっとご近所の方に聞いてみてください。普通と思っていた自宅のお雑煮が実は珍しいお雑煮かもしれません。今回はそんなお正月に欠かせないお雑煮のお話です。
事の始まりは、私の実家のお雑煮について博物館内でおしゃべりをしていた時のことです。私の地元、千葉県のお雑煮には写真のように餅以外の固形物は入っていません。すまし汁仕立てで海苔、青のり、ハバノリ、かつお節をあぶって揉みくだいたものをかけるだけのとてもシンプルなお雑煮です。これを聞いて驚いた他の職員たちは我が家こそ普通のお雑煮だと主張し始めました。
ところが、鶏肉、大根、人参などの具材は似てはいるものの、出身地が各々異なることもあり、誰一人として同じお雑煮の職員はいませんでした。また、徳島県出身者の家では白味噌仕立てであんこ餅を入れるという珍しいお雑煮も話題に上がり、私はお雑煮の多様性に舌を巻きました。
このことから町田のお雑煮は一体どのようなものかと興味がわき、町田の昔ながらのお雑煮について市内旧家出身の方にお聞きしたところ、かつお出汁と醤油のすまし汁に焼いた切り餅、大根、里芋を入れたお雑煮が典型的な町田郷土のお雑煮とのことでした。そこへ彩りのために小松菜や人参、椎茸、鶏肉を入れることもあるそうですが、出汁の染みた大根とほっこりとした里芋だけでもとても美味しいそうです。シンプルなお雑煮で育ち、沢山の具材が入ったお雑煮には抵抗がある私にとっても共感できるお雑煮です。
お雑煮は作り手の出身地の味や地域に伝わる味などが混ざり合い、地域や家庭によって多種多様な食文化が生まれるとても興味深い行事食です。何かと人と会う機会が多くなる新年の話題として、皆さんのお雑煮について話の花を咲かせてみてはいかがでしょうか。
現在、三輪の森ビジターセンター内にある郷土資料展示室にて町田のお雑煮についてのパネル展示を開催中です(2月9日(日)まで)。年末年始のごちそうで重くなった体のリフレッシュもかねてビジターセンターへお気軽に散策にいらしてください。※三輪の森ビジターセンターは月曜休館です。
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