町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の141
踊り子
春の野に姫踊り子草が舞う。オドリコソウの名は、花が踊り子のように並ぶ様子から付けられたとされるが、ヒメオドリコソウについては、コミカルな花は小さく目立たないかわりに、葉がまるでドレスのように重なっているからだと、私は勝手な思い込みをしている。
オドリコソウは日本、朝鮮半島、中国に分布しているが、ヒメオドリコソウはヨーロッパからの帰化植物で、主に本州の平地ならどこにでもある。ひしめくように生えるヒメオドリコソウに春風が渡れば、まさに踊り子が集まって踊っているように見える。
バレエ
ウクライナはバレエ大国。多くの優れた踊り子を輩出している。ロシアの侵攻により、ウクライナから泣くなく避難を余儀なくされた踊り子たち。その受け入れ先として、淡路島は有名なバレエ団を迎え入れ、練習場所なども提供した。淡路島も自然災害で多くの国から助けられた。だからこそ、そのありがたさと助け合う大切さを知っている。
ロンドンにあるエドガー・ドガの絵画「ロシアの踊り子」は、ウクライナからパリにやってきた踊り子を描いたもので、踊り子はウクライナ国旗の色の髪飾りをつけている。そこで絵画の名はロシア侵攻を機に「ウクライナの踊り子」と改名された。芸術までもが翻弄されている。
ヒメオドリコソウも夏になれば雑草扱い。それでも、季節ごとに吹く風に翻弄されながら、踊り、舞い、また春が来れば若々しく吹きだしてくる。母国の家族や友人を心配しながらも、伝統や誇り、文化を絶やすまい、と技を磨く踊り子たちが故郷に戻れる日が早く来るよう祈るばかりだ。
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宮司の徒然 其の142町田天満宮 宮司 池田泉5月16日 |
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