成瀬を会場に今月行われたイベントで、香ばしい匂いを漂わせるうなぎの屋台が注目を集めた。焼いていたのは、今年創業45年を迎えた「うなぎ双葉木曽」の店主、高木瞳さん(36)=写真。店の創業者の孫で、店を切り盛りしてきた祖父母の味を伝えていくため、奮闘している。
うなぎ双葉木曽は高木さんの祖父が創業。祖母と2人3脚で切り盛りし、地域住民らが利用するうなぎ店として長く愛されてきた。ただ、およそ10年前に祖父が認知症を発症。存続の危機を迎えることになったという。祖母が祖父を支えるなか、高木さんは子育ての合間をぬって接客を手伝い始め、なんとか店を開く日々が続いていった。
そんな状態から4年ほどが過ぎた頃、高木さんはいつも楽しみにきてくれる常連客のためにも、「ここで終わらせたらもったいない」と思うように。何とかしなければと考えるなか、「私、うなぎ焼いてみたい」と冗談半分で口にすると、祖父母は賛成。引き継ぐことを決意したのだという。
祖父からの技術継承は難航した。認知症が悪化していき、技術を言葉にすることができなくなっていったのだ。それでも、高木さんは祖父の仕事を見て覚え、1年を経て厨房に立つように。何人もの弟子を抱えていた祖父に認められたものの、お客さんに食してもらうのは不安が大きかったが、「おじいちゃんの味と同じと言われた。本当にうれしかった。今でもモチベーションになっている」という。
昨年の春には共に店を支えてきた祖母が他界。改めて自分が店を運営していかなければと自覚することになり、改めて店の味を伝えていくためには、と考えるなか、地域イベントへの出店を検討するようになったのだという。「祖父母から受け継いだ味を手ごろ値段で提供し、これまで店に来たことのない人にも知ってもらおうと考えました」
イベントでの「うなぎ店」は盛況だった。10、11月と町田市内で行われる催しにも新メニューなどをもって出店するつもりだ。高木さんは「今の私の姿を見たら、祖母はいつもみたいに『自慢の孫』っていってくれると思う。祖父母から受け継いだ味をつないでいきたいと思います」
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