令和2年度文化庁芸術祭賞の演劇部門新人賞を受賞した 高野(こうの) 菜々さん 都内在住 31歳
舞台の上ではうそつかない
○…公演のリハーサル中に全員集合の声が掛かった。「もしかしたらコロナで舞台が中止になるのかも」。一瞬よぎった嫌な予感は外れ、文化芸術祭賞の受賞という思いもよらない朗報がカンパニー(劇団)みんなの前で発表された。周囲に祝福され嬉しすぎて頭が真っ白になる中、「ここからもう一度スタートに立つ」と自身に言い聞かせ気持ちを新たにする。
○…生まれも育ちも広島県。母親の影響で小さいころから「正義は勝つ」を信条にしてきた。先輩でも理不尽なことには真向から対抗。いじめや仲間外れにあっても負けなかった。高校は宝塚を目指して音楽学校へ進学。宝塚の夢に破れて失意に沈む中、出会ったのが女優や歌手として活躍する新妻聖子さん。公演のバックコーラスダンサーをしたときに「あなた輝いている」と言われたことがミュージカル女優になるきっかけだ。
○…歌うことが大好きだから、今は好きなことを仕事にしている毎日が楽しくてしょうがない。息抜きはおいしいものを食べること。時間があれば稽古場のある町田駅周辺の飲食店をのんびりと散策し、お気に入りの店を見つけて一人で食べ歩く。「最近はまっているのがタイ料理。そのとき食べたいものを思い切り食べると元気が充電されるんです」と笑う。
○…19歳で上京し音楽座ミュージカルに入団して12年。「舞台の上では絶対にうそはつかない」と決めている。役を演じるのではなく、内なる自分自身と深く向き合う。人としての弱さや醜さ、役との共通点を見つけ、素のままの自分をさらけ出す。町田から世界へ向かうという大きな夢がある。「オリジナルを発表しているのが音楽座の誇り。自分もその一員として、いつか世界で演じられるようになりたい」
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