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町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の139

公開:2024年3月7日

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野生で育ったエノキタケ
野生で育ったエノキタケ

母国語保存

 近年「エノキタケ」に特別な成分があるとかでもてはやされた。本来、エノキタケは野生では木に寄生して発生するキノコ。ナメコをやや大きめにして柄をつけたような姿。色も薄茶。しかも発生時期は主に冬。それを暗室で促成栽培すると、あの売ってる白いヒョ

ロヒョロの鍋の定番エノキタケになる。椎茸と同じように一度乾燥させてから調理すると旨味も倍増する優れもの。

 ただし、誰もが「エノキ」と呼ぶ。これはNG。「エノキ」は「榎木」と書き、これは樹木の名前。木に寄生するキノコで有名なシイタケは椎の木に出るから椎茸という。エノキタケは榎木に発生することが多いから榎木茸と名付けられた。シイタケを略して「シイ」とは呼ばないのに、松茸を略して「マツ」とは呼ばないのに、エノキタケを略してエノキは変じゃないか。

迷走

 何でもかんでも略す傾向は日本語の乱れを生じ、正しい言葉とそうでない言葉の境界線が曖昧になってきているから、場面に応じて使い分けできない人が増加中。これに間違った使い方がまるで常用句のように加わって日本語は迷走し始めている。

 例えば大流行の「リベンジ」。日本人は「挽回」や「仕返し」のように使用しているが、本来の意味は「殺して仕返しする」。過激でない「日本型リベンジ」を外国人は苦笑している。また、スポーツ選手がよく使う「モチベーション」も、日本では「やる気」とか「意欲」のように使われているが、本来はその原因となる動機を示す。例えば「世界で優勝する」という動機がモチベーションであるから、テンションと混同してモチベーションが上がるとか下がるという表現はふさわしくない。イスラム国」のように誤解を招いてしまう訳し方は、慌ててISILと呼び方を変えたが事すでに遅く、イスラム圏以外の国にいる穏健派のイスラム教徒(=ムスレム)が迫害を受けたりした。その他ISやISISと呼んだりもして、実際現地ではDeashと表記されているからややこしい。

 同様に、略された日本語や間違った意味の和製外国語も、使用を規制するのではなく使い分けができるような教育が必要ではないだろうか。使いやすいから、格好が良いからという理由で安易にカタカナや略語を乱発するより、もっと日本語を上手に使える方が素敵だと思う。母国語をもっと大切に愛するべき。

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