北原国際病院(大和田町)などを運営する医療法人社団KNI(同/北原茂実理事長)の関連会社らがカンボジアに救命救急機能を持つ病院を開院する。北原氏が20年来、訴え続けてきた「医療の輸出」が実現する。9月20日にはフンセン首相らを招いてオープニングセレモニーが行われた。安倍晋三首相からは「官民一体となった努力が実を結んだ」などとのメッセージが送られた。
病院開設
首都プノンペンに10月17日に開院する医療施設「サンライズジャパンホスピタルプノンペン」を運営するのはプラント大手の株式会社日揮、官民ファンドの産業革新機構、KNIの関連会社「キタハラメディカルストラテジーズインターナショナル」(KMSI)が出資する現地法人サンライズヘルスサービス社。日本政府は成長戦略の中で「病院まるごと輸出」を打ち出しており、今回サ社が行うのはその施策のひとつ。北原氏が2009年から行ったERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)の調査報告書を受けて、経済産業省から声がかかった。
いずれは「逆輸入」
目的は「日本の医療を輸出」し両国に利益をもたらすこと。北原氏は20年前から医療の輸出の必要性を提唱し続けてきた。途上国カンボジアに北原氏が掲げる「地産地消の医療」「総合生活産業としての医療」を根付かせる。そしてその成功事例を周辺途上国にも展開する。最終的には日本へ逆輸入(リバースイノベーション)し「日本の医療を崩壊から救う」(北原氏)。北原氏はこれらをひとつのパッケージで考えている。
背景には日本の医療についての危機感がある。少子高齢化の影響で今後、高齢者とともに必要とされる医療従事者も増える。一方で保険料を負担する世代は減少していく。すでに病院の運営費になる医療・介護報酬の引き下げは始まっているが、今後も更なる財源不足により引き下げは続くと予想される。北原氏は「2030年には医療を生業とする2000万人がワーキングプア(働く貧困層)化し日本経済全体に大きく影響を及ぼす」と説明する。
その解決策として北原氏が導き出したのが医療を「総合生活産業」と再定義すること。病院という箱の中でだけで行われるものでなく、医療機器、保険、ライフライン、農業、ITインフラなど生活に関わることを「新しい医療」とし、産業化する。そうすることで今までにないビジネスチャンスが生まれる。その形のひとつが今回の「医療の輸出」だ。
教育、システム構築
ホスピタルでは運営、教育システム、ITインフラなど病院に関する様々なノウハウが日本から提供される。また、法的規制の少ない途上国だからできる合理的な医療を開発することも計画されている。KNI広報担当の亀田佳一(よしかず)さんは「医療の輸出産業化には2つの方法があります。私たちが進めていくのは『相手国に入り込んで、その国に適した地産地消の医療を根付かせる』アウトバウンド型のものです。そのためには医療者の養成や、保険システム、食の提供システムなど医療にかかわる全てのものを構築しなければなりません」と話す。「昨今話題の、途上国の富裕層を自国に呼び込み高額な医療を提供するインバウンドのメディカルツーリズムではありません」
セレモニーでは北原氏が「全ての方々に適正価格で高品質な医療を提供することでカンボジアの医療サービスに貢献することが私たちの願い。私たちの目標はカンボジアで高品質で継続可能な医療サービスの開発をすることです」と挨拶。安倍首相からの「官民一体となった努力が実を結び、日本の医療技術を備えたカンボジア国内最高レベルの医療拠点が誕生することは喜ばしい限り」などとのメッセージが代読された。
日本人スタッフ約20人
カンボジアは高い経済成長を遂げているが医療サービスはまだ十分には発展していない。いくつかの候補の中から北原氏が同地を選んだポイントのひとつだ。年間20万人を超える人々が医療目的で渡航しているそうで、国内の医療インフラ整備が課題となっている。
ホスピタルの病床数は50床。「救命救急」「健康診断」などの4つのセンターからなる。日本人医療スタッフ約20人とカンボジア人スタッフ約100人で運営される。現地人スタッフのほとんどは昨年度、北原病院グループで「日本特有の思いやりの医療」を学ぶ研修をおこなった。
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![]() 広報の亀田さん
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![]() サンライズジャパンホスピタルプノンペン=KNI提供
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