市内特産物の一つで、沢庵などの漬物用として八王子に根付いてきた高倉ダイコン。ただ現在、生産者は石川町の立川太三郎さん(78)一家のみに。そんななか、「地域の財産」を守ろうと、応援する団体や市内飲食店の動きがある。
高倉ダイコンは1920年頃、高倉町の農家が自然交配によって生み出したとされるもので、肉質がやや硬くて甘みがあることなどから、沢庵などの漬物用に適したダイコンとして地域に浸透してきた。
その流通を後押ししたのが、八王子の産業の中心にあった織物業。工場で働く人たちの食事のおかずとして沢庵が多く必要とされたことから、その原材料となる高倉ダイコンの需要が高まったと言われている。出荷前にダイコンを干す(すだれ干し)風景は八王子の冬の風物詩とされ、市内の象徴的な景色をまとめた「八王子八十八景」の一つに数えられる。「このダイコンだと、通常のものよりも柔らかくて美味しい沢庵ができるんだよ」と、現在唯一の生産者である立川さんは笑顔を見せる。
食生活の変化影響
ただ、そんな特産物も90年代に入った頃から、生産者が減っていった。食生活の変化により食卓に沢庵などの漬物が並ぶ機会が減り、自宅で漬ける家庭が少なくなる一方で、通常のダイコンよりも生産に手間暇がかかるためだ。
そして、10年ぐらい前からは立川さん一家だけに。「ダイコンを干すために吊るすのは重労働なんだよ。時代の流れだと思う。しょうがないよ」と立川さん。また、専用の機械や干場が必要になることなどから、新たに生産を始めるのも困難なことだ、と指摘する。
イベントなどで周知
そんななか、高倉ダイコンを応援する動きがある。長く都民の食生活を支えてきた希少性の高い野菜である「江戸東京野菜」のPR活動などに取り組む「多摩・八王子江戸東京野菜研究会」代表の福島秀史さん(52)は、江戸東京野菜に登録されている高倉ダイコンの周知を図るため、過去2年にわたって、出荷時期の12月頃に市民向けの講座を開いてきた。まつわるストーリーを伝えたり、干場の見学や試食会などを実施。「高倉ダイコンは地域の財産。次の世代に引き継いでいかなければならないという使命感で行っています」と福島さん。今年8月には、自ら川口町の畑で高倉ダイコンづくりを始めた。「立川さんに種を頂いた。”正しいもの”ができるか不安はあるが、この取り組みが少しでも周知につながれば」と意気込んでいる。
一方、千人町の割烹料理店「八王子旬香そめい」では高倉ダイコンが旬を迎える11月下旬以降、高倉ダイコンを天ぷらやステーキにした一品を提供し、周知度アップに貢献している。「昨年から本格的にメニューに取り込み始めました。歯ごたえがあり、ステーキに適している。きめが細かくて美味しい。お客さんからの評判も上々です」と店長の市川信大さん(43)は笑顔を見せる。
「見直され、うれしい」
現在、立川さんと共に高倉ダイコンづくりにあたる息子の哲也さん(44)は「私のできる範囲で伝統を継いでいきたい。廃れていく一方だったダイコンを皆さんが応援してくれ、見直されてきたことはうれしいこと」と感謝の気持ちを話す。
堀之内を拠点に野菜づくりを通して地域活性化に取り組む「フィオ」の大神辰裕代表は「八王子にゆかりあるもの。チャンスがあれば、私たちも生産に携わりたいという思いはある」と関心を寄せている。
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![]() 沢庵などの漬物用に適した高倉ダイコン
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