八王子拓真高等学校(台町)の軟式野球部が先月、東京都定時制・通信制春季大会で2連覇を達成し、8月15日(水)に開幕する全国大会への出場が決まった。昨年つかみかけた「日本一の座」奪取に向け、チームの士気は上がっている。
「最後までボールを追おう」「声出していこう」。7月上旬の同校グラウンド。全国大会に向け、学校が休みの土曜日に練習を重ねる同部部員の姿が見られた。ただ、マネージャー6人を含む、4学年23人のメンバーのうち、参加していたのはその半数程度。残りはアルバイトのため、参加できなかった。
「勉強とアルバイト、そして野球の3つを追うのが私たちの部ですから」と、この日、飲食店のアルバイトのため練習を休んだ主将の高橋優也さん(3年)は話す。
同校は、仕事をもつ生徒が多く通う定時制高校。生徒は午前、午後、夜間それぞれから自分が希望する時間帯を選び授業を受けている。そのため平日は、メンバー全員の時間が合わないことから個人練習が中心となり、全体で集まれるのは土日などに限られる。
広田悠介監督は「仕方のないこと。限られた時間を活用して強くなっていきたい」と話し、挨拶やグラウンド整備をしっかり行うなど、「当たり前のこと」ができるように指導しているのだという。
「部で学んだことを生かして、社会で活躍できる人材になってもらいたいんです」
「日本一」掴み損ねる
先月の都大会で2連覇の原動力となったのが1年前の悔しい思いだ。昨年の全国大会。広田監督が目指す攻撃野球をナインが実践し決勝進出を果たすと、大会10連覇中の奈良県代表・天理高等学校と日本一をかけ対戦した。ゲームは一進一退で進行していたものの、勢いのある拓真が1点リードで最終回を迎え、1つ、2つとアウトを重ねていった。
しかし、「あと一人」というところで、勝利の女神から見放されることに――。「最後の打者」が打った打球はセカンドへのゴロ。二塁手がファーストへ送球してゲームセット、と思われたその瞬間。ボールが外れ、打者はセーフ。
なお次の塁へ向かう姿に慌てた拓真ナインは更に暴投などを重ね、セカンドゴロだったものをランニングホームランにしてしまった。「結局、延長戦に突入して最後は1点差で負けてしまいました。悔しいという思いしかないですね」と広田監督は振り返る。
敗戦、力に
ただ、その敗戦がチームを成長させてくれた、と広田監督は話す。大会後、上級生らが抜け、戦力ダウンしてしまった新チーム。
だが、高橋さん中心に選手たちが変わっていったのだという。以前は、同部の指導者5人の誰かがいなければ、しっかりと練習を行わないことがあったものの、新チームは、選手それぞれが自主的に練習を重ねるようになっていった。
「全国大会での悔しさは忘れられないですから。みんなで今年は日本一になろうと決めたんです」と高橋さん。
まだ昨年のチーム力には及ばないものの、一戦一戦強くなり、その伸びしろを見守るのが楽しい、と広田監督は顔をほころばせる。
初戦で昨年優勝校と
奇しくも、来月15日に稲城市で行われる、全国大会の1回戦は天理高校との対戦となった。
「開幕戦であり、昨年の決勝戦のカード。観客も多くなると思うのでプレーするのが楽しみでしょうがないです」と高橋さんは語り、ベストの力を見せたい、と意気込んでいる。
高橋さんのアルバイト先である、立川市にあるラーメン店の社員は「明るくて愛嬌のある子。まじめに仕事に取り組んでくれている。全国大会では昨年の雪辱を果たしてもらいたい」とエールを送っている。
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