知的障害者による柔道の初の全国大会が、片倉町の日本文化大學で開催される。過去の実績や立地の良さなどから同大学が会場に選ばれた。昨年は世界大会(ドイツ)も行われており、柔道を通じた障害者理解の機運が高まっている。
「第1回全日本ID(知的障がい者)柔道選手権大会」は9月16日・17日に開催される。主催は(公財)全日本柔道連盟(全柔連)。目的は知的障害者への柔道の普及と、互いに尊重しあう社会づくりをめざすこと。今回の大会は、来年の世界大会(オランダ)に向けた選考会も兼ねているという。
参加資格の最少年齢となる16歳から、上は49歳まで全国から35人が集まり試合を行う。全員が柔道経験者で健常者の大会に出場している人もいる。競技の実力に応じて健常者と同等に試合ができるレベルAから、楽しむ程度の乱取り(試合形式の練習)ができるレベルCまでの3クラスに分ける。安全のため、捨て身技などは禁じられている。障害の程度に応じ、必要であれば試合中でも監督者が受け身を手助けしたりできる。
試合で音楽も
通常の柔道の試合とは異なり、音楽をかけたり、選手のプロフィールをアナウンスしたり、試合を実況したりといった演出も加える。日本文化大學の柔道部監督で今年1月1日に発足した全柔連の「知的障がい者柔道振興部会」の部会長を務める浜名智男さん(53歳)は「彼らは明るいことが好き。目いっぱい楽しませてあげたい」と話す。
浜名さんが12年前に大磯町(神奈川県)で道場を開いた際、3人のダウン症の子が入門してきたという。健常者と一緒に今でも柔道を続けており、昨年段位を取得。段位をとるためには原則、大会に出場する必要があるが、柔道の総本山である講道館が昇段の内規を変更したことから、この変更をいかした昇段の最初のケースとなった。
全国に電話案内
世界的にも知的障害者柔道の普及は動き始めたばかり。昨年、国際柔道連盟が後援する初めての世界大会がドイツで行われた。こういった動きを受けて柔道発祥の国である日本でも取り組むべきという機運が高まり、全国大会の開催につながったという。同部会で5月から7月にかけて全国の道場や中学・高校の柔道部などにアンケートをした結果、知的障害がある柔道家は55団体・110人だったという。「やっているところ、すべてに電話をして大会の案内をした」と浜名さん。
同大学では昨年、知的障害者スポーツの組織「認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本・神奈川」による神奈川地区大会が開催された。日本で行われた知的障害者の「競技柔道」としては初めて。こういった実績に加え、宿泊施設(大学セミナーハウス/下柚木)も近いことから初の全国大会の舞台に選ばれた。
昨年の大会に引き続き、今回も同大学柔道部の学生がボランティアに加わる。昨年参加した野間勇哉さん(3年)は「みんなで楽しく練習できたので、試合のときの応援にも力が入った」と話す。同じく南條美咲さん(3年)は「萎縮してしまう人もいるので、雰囲気づくりが重要」と話した。
試合前日は、障害の程度を見極めることも兼ねて合同練習が行われる。浜名さんは「障害者がいることは『特別なこと』ではない。彼らが柔道をするためには指導者も練習場所も必要。指導者や柔道関係者に見てもらい知ってほしい。演出も含めて『何か面白そうなことをしているな』と惹きつけたい」と話す。
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![]() 昨年の試合の様子=提供写真
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