江戸時代、八王子地域の治安維持にあたっていたとされる武士団「八王子千人同心」の功績を語り継ぐ市民グループが今年、創立50周年を迎えた。会員の高齢化という課題に直面しながらも郷土の歴史を後世に――という使命をもって活動している。
八王子に大きな痕跡
千人同心は1000人からなる江戸幕府直属の槍隊で、その住居があったことから千人町という地名が現在も残るなど、現在の八王子に大きな痕跡を残している。
現在、栃木県日光市や北海道苫小牧市と八王子市が姉妹都市であるのは、千人同心が日光には「火の番」として出向き、蝦夷地(現在の北海道)の開拓に千人同心が関わったことがきっかけとなっているという。
今年6月に50周年を迎えた市民グループ「八王子千人同心旧交会」の4代目会長を務める粟澤裕さん(83)は「会は私を含め、同心の子孫の方が多く参加している。皆さん、祖先の功績を語り次いでいきたいという思いが強いんではないでしょうか」。会が継続し続けてきた理由を、粟澤さんはこう見ている。
会員300人
会は現在、同心の子孫や郷土史に興味をもつ人など300人程度が名を連ね、年に2回、会報誌を発行して会員のつながりを深めているほか、定期的に役員などが集まり会の活動について話し合いをもっているのだという。「会が地元愛を呼び起こしてくれている側面もあると思います」と粟澤さん。
ただ、会員の高齢化が進み、活動が縮小傾向になっている、とも話す。以前は、友好都市である日光などへ同心をきっかけに親睦を深めるための訪問を実施したり、市内外の祭りなどで会員が千人同心の恰好をしてパレードに参加し同心の認知度をあげる取り組みなどをしていたものの、現在はそれら周知活動が減っているのだという。
「平均すると会員は60歳を超えるかな。30、40代の現役世代では活動は難しいし、次世代へいかにつないでいくかが課題だよ」と粟澤さんは苦笑いを見せる。
会に、千人同心に関する情報を提供してもらうなど、文化財保護の分野で協力してもらっていると話す八王子市の担当者は「市にとって重要な歴史のひとつである千人同心を継承、周知していくために今後とも、お力を借りていきたい」とその活動に期待を寄せている。
19日、記念式典
10月19日(金)には、同心が集う場でもあった千人町・宗格院で50周年を記念する式典(関係者のみ)が開かれる。「良い節目になる」と粟澤さん。記念に製作した特製Tシャツを手に笑顔でそう話している。同会では現在、入会希望者を受付けているという。問い合わせは宗格院【電話】042・661・0960へ。