八王子を始めとする多摩地域で地元農家と消費者をつなぐ催しを開き、地元野菜の「価値」を見直す機会をつくる取り組みを打越町の山田正勝さん(38)らがスタートさせる。目指すは都市農業の継続的な発展、と意気込んでいる。
「おしゃべりしながらゆったりとした時間が過ごせれば」。そう山田さんが考える催しは地元野菜をつかった料理を楽しみながら、野菜をテーマとした専門家の講演などを挟む構成で開かれるランチパーティ。第一弾として、10日(土)に八王子市役所(元本郷町)の地下1階食堂で開催し、24日(土)に日野市、来月には多摩市でも、それぞれの地域に合わせた食材、ゲストを招き開催していく予定という。「多くの方に来てもらいたい。特に子育てや親の介護などで食事をつくる機会が多い主婦の方に」と話し、”身体に良い”地元野菜の魅力を知ってもらいたいんです、と笑顔をみせる。山田さんが立ち上げたNPOが主催し、資金の一部はクラウドファンディングで募っている。
「都市部での農業は周囲の家などを考慮して肥料や農薬は必要最低限しか使わないんです。だからこそ、質の良いおいしい野菜ができる」。そのことを消費者に知ってもらい、地元野菜の価値向上を図ることで都市農業の継続的な発展につなげたい、と山田さんは開催に向け準備を進めている。
自身の経験が元に
背景にあるのが自身の経験だ。学生時代まで「ひ弱だった」という山田さんが野菜の魅力にひかれたのは大学卒業後に入隊した自衛隊でのこと。厳しい訓練を支えたのが、規則正しい生活習慣や野菜を始めとした栄養のある食事だったのだという。「それまではお菓子など好きなものだけ食べる生活でかぜなどをひきやすかったんですが、野菜をしっかり食べるようになって病気をしなくなったんです」
そして、4年間の自衛隊生活を終え一般企業に就いた後も、野菜の質にこだわるようになったという山田さん。そんななか、縁あって在籍した、堀之内の農業に関わる会社に属しているときに都市農業の苦境を知ったことが今回のイベントを企画する発端に。大量生産できないことなどが要因で経営が厳しい多摩地域の農家の姿を見て、「質の高い野菜をつくっているのにもったいない。このおいしさをみんなに知ってもらいたい」と考えるようになったのだという。自身のように魅力を知った消費者が地元野菜を購入するようになり、農家の生活が安定する――。多摩地域をそんな場所にしていきたいと力を込めて山田さんは話す。
「いずれ都区部でも。活動を通してみんなの食生活を豊かにしていきたいですね」