視覚障害者と晴眼者が共に社交ダンスを楽しむ会「八王子ブラインドダンスサークル」が今月、設立5周年を迎える。引きこもりがちな視覚障害者に外出するきっかけを――。代表を務める、視覚障害のある宇田川敏男さん(69・明神町在住)のそんな思いが会を支えてきた。
「背筋をまっすぐに」「手が下がっちゃ駄目」──。東町のクリエイトホールなどを拠点に毎週水曜日、練習を重ねる同サークル。
メンバーは社交ダンスの世界でブラインドと呼ばれる視覚障害者と、サイテッドという晴眼者のそれぞれ7人で構成され、宇田川さんは「ほとんど60歳以上。会則には『練習中の私語は慎む』としているんですが、みんなお喋りも大好きなんですよ」と笑顔をみせる。
そして、ブラインドは見て覚えることができないので、指導を仰ぐプロのコーチに手取り足取り教えてもらう必要がある、とも。
「晴眼者よりも3、4倍の努力が必要となります。でも、みんな頑張っていますよ」
14年に立ち上げ
宇田川さんがサークルを立ち上げたのは2014年7月。
通っていた市内の視覚障害者の集まりで、妻の由貴子さんに誘われて、この年に始めたダンスについて話をしたところ、盛り上がり、「サークルをつくっちゃおう」と。引きこもりがちな視覚障害者を外へ向かわせるきっかけの一つになれば、という思いも宇田川さんのなかにはあったのだという。
「サークルを運営していくなかでブラインドのメンバーからダンスに熱中している『今が青春』という言葉をもらったことも。立ち上げて本当に良かったと思っています」
難病で失明
明るくサークルを引っ張ってきた宇田川さんだが、過去には「苦しい時」も。40歳過ぎに難病を発症、視力が低下していったのだ。
元々、大手の会社でばりばりと仕事をこなしていた企業戦士。ライバルたちに「負けたくない」と猛烈に働く生活を送っていただけにその衝撃は大きかった。
「様々な治療法を試し、現在の医療では治すことができないと聞いたときは信じられない気持ちでした」と振り返る宇田川さん。なかでも強い抵抗感を覚えたのが、白杖をもつことだったという。「通勤時に会社の前だけ、白杖を使わなかったんです。まわりに気づかれたくないという思いが強かった」
そんな苦境のなか、支えとなったのが由貴子さんと2人の娘の存在。難病が発覚して以来、自暴自棄になることもあったという宇田川さんだが、「家族のために」という思いが力となり、パソコンの技術を高めるなどして、60歳の定年を迎えるまで会社に貢献してきた。
由貴子さんは「乗り越えられたのは本人の力によるところです」
10日に記念パーティー
引き止められながらも会社を退職した宇田川さんが選んだのが「自由」。ヨットやマラソンなど、定年後は、自分の力を試すためのチャレンジの時間と位置付けた。
「戦うのが好きなんです。社交ダンスも大会で好成績を残したいと考えています」。そして、10日(水)には、クリエイトホール5階で、5周年記念パーティーを開催するのだという。「ダンスは妻の方が先輩。うまく引っ張れれば良いんですが」
パーティーは同日、午前9時30分(開場は9時)から。一般の見学も自由だという。問い合わせは同サークル小室さん【携帯電話】090・2764・4380へ。