八王子市が現在、昨秋起こった「令和元年台風第19号」を教訓に防災対策の一部見直しを進めている。今月中には19号の記録誌をまとめるとし、防災に関する市のルール変更を含めた検討を始めている。
過去最大級
「八王子にとって過去最大の台風だったと思う」--。こう八王子市の防災課担当者が話す台風19号が発生したのは昨年の10月12日。
市は当日、午前8時に避難勧告を出すと気象庁が定める警報のうち、数十年に1度の大雨を指す「大雨特別警報」が市内で初めて発表されるなか、午後3時30分には避難指示を出すことに。
市内では、市民らが小学校などに設けられた避難所へ向かうなか様々なトラブルが発生した。
その1つが避難所が足りなくなるという事態。前例を元に市が前日設定していた避難所は24カ所だったが、それでは足りず、急遽12カ所を追加。計36カ所で8000人を超える避難者を受け入れることとなり、「過去に八王子で起きた台風での避難者は多い時で200人を少し超える程度だった。ここまで大きな台風がくるとは」と市防災課の担当者は当時を振り返る。
また一方で台風直後には、「市のHPがつながりづらかった」「防災行政無線の内容が強風や雨音で聞こえなかった」など、情報伝達がスムーズにいかなかったことに対する声が市内から数多く聞かれることになった。
検証を実施
そんな事態を受け、市は災害時のルール変更を含めた検証を開始している。
避難所を決める定義を改めるほか、防災行政無線の改善や市のHPについて運営する東京都と機能性向上のための議論を始めている。
災害時の職員の配置についての検討も行っているという市の担当者は「次の台風シーズンまでには新たなルールを決定したい。今月末には台風19号に関する記録誌をまとめ、市内に全戸配布している防災に関するガイドブックの改定も考えている」と話す。
「顔のみえる」再認識
今回の台風でその必要性が再認識されたのが、顔の見える関係づくりの大切さだ。日頃から避難訓練などを実施している町会や自治会では今回、避難所のキャパオーバーなどの混乱が生じた場合でも「それぞれの地区のリーダーを務める市民の方が上手く対応してくれた」と市の担当者。
市内の自治体・町会らで構成される「八王子市町会自治会連合会」の事務局長の前野修さんは「1995年に起こった阪神淡路大震災で地域住民の協力により、被害が抑えられたという事例を受け、八王子でも地域の顔のみえる関係づくりを進めてきたことが今回も生きたと思う」と話し、遠くの親類よりも近くの他人の方が防災時は大切となると笑顔をみせる。
市の担当者は「災害時、市の職員ができることは限りがある。市民には町会や自治会に加盟し、日頃から顔見知りの関係をつくることが万が一のための備えになることを知ってもらいたい」と話している。