片倉城跡公園(片倉町)に咲くカタクリが見ごろを迎える。公園が開所した1972年から薄紫色の花を咲かせてきたこのカタクリは「名所」として八王子市内外から人を呼び寄せている。
「可愛らしい」「こっちにも咲いている」――。毎年、3月下旬から4月初めにかけて城跡公園内に咲くカタクリ周辺ではそんな声が聞かれる。JR・京王片倉駅からそれぞれ徒歩5、6分程度で国道16号線沿いと、山中などでしか目にする機会が少ないカタクリを身近に楽しめるスポットとして、市内外から人が集まってくるようになって久しい。なかには毎年、見学ツアーを組んで来園するグループの姿もあるのだという。
「大学教授など影響力のある方がこの花に触れてより有名になったと思います」と城跡公園の管理を行っているNTアーバンビレッジパークの統括所長を務める矢澤英陵さんは話す。
当初から
矢澤さんによると公園が開所した当初からこの直径15センチに満たない繊細な小花は来園者の目を楽しませてきたのだという。満開時には公園内の斜面一帯に薄紫色の群生が見られるようになり、地域に春の訪れを知らせる役割を果たしてきた。
10年以上にわたってこの花を見守ってきたというNTアーバンビレッジパークの田中健さんは「カタクリを見かけるようになると忙しい季節になるなぁと感じますね。暖かくなって増えてくる野草を刈らなければいけなくなるので」と笑う。
そして、「水分」を好むカタクリにとって湯殿川などが近くを流れ、湧き水の水源地でもある城跡公園は住みやすいのでは、と話す。一方で薄紫色の花を見守るように取り囲む公園内の雑木林もカタクリを守っているのだという。「直射日光を避け適度な光をカタクリに通す役割を果たしているんです。自然のままを大切にしてこの公園を管理してきたことが名所を生んだのだと思います」
不安も
そんなカタクリも名所ならではの悩みがあるのだという。その1つが盗難。口コミが広がり注目が集まるのと比例するように、心無い人によって花が持ち去られる事例が増えているのだといい、またその風景を残そうとすることが、公園内の整備が進まない要因の1つになっているとも矢澤さんは話す。「公園内の雑木林はこれ以上成長するとカタクリへの日光の光を遮ってしまう恐れがあるんです。根本から伐採して若返らせる手もあるのですが、それでは今の里山風景を崩すことになる。難しいところです」
一方、田中さんは「カタクリは八王子などの一部多摩地域では絶滅危惧種の1つとされているようです。皆さんには大切に見学してもらいたいと思います」とし、城跡公園は今春、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、花見などの宴会自粛をお願いしています、とも話している。
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