振り込め詐欺など特殊詐欺の東京都内における認知件数が減少傾向という。八王子はどうなのか――。取材した。
昨年は11件減
八王子警察署(元本郷町)管内では、昨年1年間の特殊詐欺による被害総額は約2億2500万円で一昨年の2018年と比べておよそ1億2000万円の増加がみられたのだという。
ただ、認知件数は18年の62件に対して19年は51件と11件減少し、担当する同署の吉岡幸造・生活安全課長は「昨年は多額の被害を受けた詐欺が1件あったため、被害総額があがってしまったが、当署管内でも減少傾向にあるのは間違いない。今年に入ってからも昨年対比で減っている」と話す。
地道な活動が功
背景にあるのが同署警察官らによる地道な周知活動だ。
八王子署では管内に住む70歳以上の高齢者宅を個別訪問し、特殊詐欺に巻き込まれないように注意を呼びかけてきたほか、昨年から買い物客らでにぎわうJR八王子駅北口周辺から始まる西放射線通りで注意をアナウンスしたり、同駅北口から見ることができる電光掲示板に特殊詐欺に関する動画を流し注意を喚起してきたのだという。
「個別訪問では、自宅入口の内窓に『詐欺です。すぐに110番!』というシールを昨年から貼ってもらうようにした。犯人の指示でお金を振り込みに行こうとする高齢者がそれを見て冷静になってもらえればと思う」と吉岡課長。年々、周知するツールが増えているのだという。
高止まり
一方で、吉岡課長は「高止まりしているだけ」とも。18年が全国的に見てもこれまでで一番被害が多かった年だったことから、昨年は数字的に減少することになったものの、「例えば2000年代初めの頃と比べると近年は格段に被害件数が増えている。今後も周知を徹底していきたい」と力を込める。
最近の傾向としては、”すり替え”が増えているのだという。「あなたのキャッシュカードが悪用されている可能性がある」などとして犯行グループは高齢者宅を訪問。言葉巧みにキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを出させた上で用意した別の封筒とすり替えるという犯行だ。「受け子としてやってくるのは若者が多い。だから、着なれないスーツ姿でスニーカーを履いた人物などは注意が必要です」
コロナに便乗するケースも
そして都内では最近、新型コロナウイルスに便乗した詐欺まがいの電話がきたケースがあったのだという。
「未然に終わりましたが今後増えてくる可能性があります」と吉岡課長は話し、「特殊詐欺は、誰もがいつ騙されてもおかしくないもの。注意してもらいたい」と訴えている。
「これは特殊詐欺だ」地域が「防ぐ」事例も
南大沢警察署(南大沢)管内では昨年、コンビニスタッフが特殊詐欺を未然に防いだ事例があったのだという――。
立役者は長沼町にあるセブンイレブン八王子長沼町店。昨年5月のある日の午後3時過ぎ、ひとりの高齢女性が同店を訪れた。「これどうやって振り込むの?」と女性ははがきを手にそう同店スタッフに話しかけてきたのだという。
ただ、話を聞いていたスタッフから代わったオーナーの長谷川格さんが「何のためのお金なの」と女性に聞いても口ごもるだけ。そして、「よくよく聞いてみると、お金を振り込むことを『誰にも相談してはいけないよ』と言われていたそうなんです」
そこで、「これは特殊詐欺だ」と気づいた長谷川さんが南大沢署に通報し、事件は未然に食い止められることに。「犯罪が起こらずなによりです。本当に良かった」
背景に防犯会議
そんな活躍の背景にあるのが、南大沢署管内のコンビニオーナーらが参加する”防犯会議”。2カ月に1度、同署内で開かれ、コンビニオーナーらが署員らと防犯に関する意見交換を行っているのだという。「南大沢コンビニエンスストア防犯協力会として活動しています。最近は万引きが増えている。こちらも事件を未然に防いでいきたいですね」と長谷川さんは話している。
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