地域の有形・無形の文化財を「ストーリー」にまとめ、観光振興につなげる「日本遺産」にこのほど、八王子市が申請した高尾山についてのストーリーが認定された。都内での認定は初となる。
市が申請 文化庁認定
日本遺産は2015年から始まり、全国で104件が認定されている。たとえば四国4県の「四国遍路」や宮城県の「政宗が育んだ伊達な文化」など、地域の特色を表した内容となっている。倍率は3、4倍程度で、今年度は21件が認定された。八王子は都内で初の認定で、申請自体も初だった。市では「高尾山と桑都(そうと)(絹産業)を結び付けた点。また高尾山では火渡りなどの行事は(無形の文化財として)体験することもできる。こういった点も評価されたようだ」と話す。
認定されたストーリー「霊気満山 高尾山 〜人々の祈りが紡ぐ桑都物語〜」では、八王子は養蚕や織物が盛んだったことから「桑都」と称され、古くから霊山として高尾山を信仰してきた様子が描かれている。
きっかけはネズミ
戦国時代に北条氏照が居城を築いたことから八王子の歴史が始まった。江戸時代には、八王子宿が絹産業を基盤に発展し、幕末から明治にかけては横浜へ出荷するための「絹の道」が栄えた。
その絹産業と高尾山信仰が深く結びついた理由は、養蚕農家が大切な蚕をネズミから守るために、高尾山薬王院の護符を求めたためだという。八王子宿を中心に生糸や織物を扱った絹商人は、養蚕農家や江戸の問屋に同院の護摩札の配札を取り次いだ。
養蚕農家や織物業の人々は、所願成就の返礼として杉の苗木を奉納した。この杉苗奉納は高尾山信仰の特色の1つ。参道に並ぶ奉納板は江戸時代から続くもので、八王子はもちろん、群馬や埼玉などの絹産業に関わりの深い人の名も見られる。同院によると、今年は1898人からの奉納があり、それらにより「お山の自然が守られている」という。
観光回復に期待
認定について同院では「八王子に伝承されている様々な有形・無形の文化財と共に、霊気満山たる高尾山を未来へ守り伝えていくためにも、多くの人たちと手を携えていくことが、これまで以上に大切」と話す。
八王子観光コンベンション協会では「移動の自粛解除など、『これから』というタイミングで明るいニュースになった。ケーブルカーの乗車制限など、感染症予防の取り組みが各所で行われている。ソーシャルディスタンスに気を付けながら観光客に戻ってきてもらえれば」と話した。
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