牛が天然痘(痘瘡)の悪鬼を踏みつけ子どもを助ける「保赤牛痘菩薩」の口絵が描かれた書物―。江戸時代、天然痘が大流行したときに、小児医師・桑田立斎氏が牛痘苗(ワクチン)の接種を広めるために書いたものだ。書物は市内の個人が所蔵していたもので、現在、八王子市郷土資料館(八王子市上野町33)の企画展「八王子の天災と疫病」で展示されている。
天然痘はウイルスによる子どもの罹患率と死亡率が高い伝染病のひとつ。牛痘(牛の天然痘)を接種し、体内に抗体をつくる手法は人類初と言われている。「口絵は当時、牛痘を打つと『牛になる』というデマも広がり、正しいワクチンの情報を広めるために桑田立斎氏が書いたものです」と話すのは企画した同館の学芸員、加藤典子さん。「子どもたちを守りたい気持ちが伝わりますね」とも。
日本で初めて接種されたのは、1849(嘉永2)年、八王子での接種はその翌年だった。加藤さんは「比較的早く実現できたのは、接種を広めた伊東玄朴らの弟子と八王子の医師につながりがあったこと、八王子を治めていた代官が西洋医学に関心が高かったことも影響しています」と解説する。
企画展には、疫病のほかに、江戸時代以降発生した八王子の洪水害など、気象災害をテーマとした資料も展示している。加藤さんは「飢饉が起こると疫病が流行り、疫病と気候は連動しています。天災と疫病の歴史から現代の防災や減災を考える機会になれば」と話す。
「八王子の天災と疫病」企画展、前期「気象災害と疫病」は2月14日(日)まで、後期「地震と大火」は2月17日(水)から3月31日(水)まで。
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