市内南東部の由木地域で歌い、踊り継がれている「由木音頭」。その文化を継承していこうと八王子市では動画投稿サイト「ユーチューブ」で踊り方などを公開している。ただ、この音頭について作詞作曲者の氏名はわかっているが「誰が振り付けを考えたのか」は長年、「資料がない」(生涯学習センター南大沢分館)とされてきた。そんな中、市内在住の男性が持つ楽譜などから、振り付け担当者や当時の様子がわかった。
現行表記は詞曲のみ
市の動画で踊りを披露する朋友会は、過去に自力で振り付けについて調べたことがあったがわからなかったそう。「誰でも踊りやすい」という、その振り付けは「先輩方から教わったもの」と話した。
6月、由木音頭についての複数の資料を持つ上柚木在住の高山和久さん(56)に話を聞いた。高山さんは由木音頭の振り付けをした瀧浦多嘉子さんの孫にあたる。直接音頭について話を聞いたこともある高山さんは昨今、市の取り組みなどで由木音頭が注目される中、「ぜひ振り付けをした祖母の名前も知ってほしい」と思うようになったそう。市による動画や音源が入ったカセットテープのクレジットは作詞伊東文夫、作曲鈴木猛のみ。一方、高山さんが持つ当時の楽譜には作詞作曲者の氏名に加え、「滝浦多嘉子・振」と記されている。
瀧浦さんは日本橋の生まれで1944年(昭和19)、疎開で現在の八王子市内に転居した。由木東小学校(東中野)などで教員を務める傍ら、日本舞踊の経験があったことから由木音頭の振り付けを頼まれたようだ。瀧浦さんは2006年(平成18)に95歳で亡くなった。
誕生時の逸話
資料はもともと瀧浦さんが保存していたもので03年、高山さんが譲り受けた。出所が不明なものもあるが、以下のような誕生時についての記述がみられた。「旧由木村には昔から盆踊りがなかった。戦後の昭和22、23年頃に女子青年団が中心になって、由木中央小学校の庭を借りて始めたのが最初だったと思う」「当時の踊りは東京でつくられたものだったので、昭和27年頃に、由木の音頭をつくろうという気運が高まり、詩(詞)を中央小学校の伊東文夫先生、曲を西小学校の鈴木猛先生、振付けを東小学校の滝浦多嘉子先生にお願いして…」「それから十年くらいは踊られたが、それを普及する音盤が無かったり、その他の理由で、いつの間にか消滅してしまった」
由木地域に住む人によると、資料にある通り一度途絶えたとされる由木音頭は1997年(平成9)頃、有志によって復活の動きがあった。制作者の表記が現行の作詞作曲のみになったのは、その途絶えたタイミングとみられる。音頭はその後、地域の運動会で親しまれるようになり、ここ2年はコロナ禍で開催できていないが現在も各町会の盆踊りなどで踊られている。高山さんは「(ユーチューブで公開されるなどしていて)本人が見たら喜んでいたと思います」と話した。
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