越野在住の文学博士、石井義長さん(88)がこのほど、8年前に出版した由木地域の郷土史についての本の改訂版を出した。太古から戦国時代までの「昔語り」をまとめたもので、市史の刷新を受け今回、補正を加えるなどした。石井さんは「歴史の筋道の考察ができるはず。この地域を知ることの手がかりにしてほしい」と話す。
「これまでより300年」
新市史を参照
「一つの地域についてここまで掘り下げたものは珍しい。また由木地域は新しい方が多く、過去の史料が多くはないので、この一冊はとても価値がある」。石井さんの「武蔵国多摩郡と由木の里の昔語り」(揺籃社)について八王子市郷土資料館ではそう評価した。
石井さんは1932年、南多摩郡由木村越野(当時)の生まれで東京大学法学部を卒業しNHKに入局。退職後は仏教の研究にも勤しみ、空也上人に関する本を執筆するなどしている。
「故郷のことを書き残そう」と石井さんはおよそ10年かけ、2013年に「昔語り」を発表した。その後、市が八王子市史を50年ぶりに刷新すると、それを参照し改訂版の制作に取り掛かり今回の出版となった。
改訂版について石井さんは「初めて明らかになったいくつかの重要な事柄を書き加えました」と話す。
文化の礎 みんなで
例えば、新市史の中で松木地区の多摩ニュータウンNo.107遺跡は京都仁和寺に伝わる「貞観寺(じょうがんじ)田地目録帳」にある荘園「武蔵国多摩郡弓削荘(ゆげのしょう)」であったと想定しているそう。そこから石井さんは様々な古文書などを調べ、由木の里の事跡がこれまでより300年、あるいは400年、古い時代の歴史文献に秘められていたことや由木の地名がこの「弓削」から転じて生まれたものであることなどを説明している。
改訂版について同博物館は「由木についての民俗本はあるが、ここまでの歴史書は他にない。また、地付きの人ならではの視点がある」と改めて評した。石井さんは「歴史は文化の礎。地域のみんなで共通認識を持って育てあげるのが大事だと思います」と話した。
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