八王子市で育ち、現在は高知県で海底下の微生物を研究する諸野祐樹さん(45)が1月31日、自身の著書「生物がすむ果てはどこだ?」を市に寄贈した。書籍は市内全小中学校などに配布される。諸野さんは「目の前の不思議を、不思議だと思うことで世界は変わる。本を通じ子ども達に伝われば」と話す。
東高OB「世界一変する」
諸野さんは、海と地球の研究所「ジャムステック」(国立研究開発法人海洋研究開発機構)に所属する主任研究員。高知コア研究所(高知県)で海底下の地層に生息する微生物の数、場所、生息状況を研究している。
今回寄贈した児童書籍「生物がすむ果てはどこだ?」(くもん出版1540円税込)は、諸野さんの初の著書。研究内容やジャムステックについてなどが書かれている。
山田小、第七中、八王子東高校出身で八王子市にゆかりがあることから、諸野さんから寄贈を申し出た。書籍は市内小、中、義務教育学校全107校に配布される。
諸野さんは「なんでだろうと思う気持ちをスルーするのはもったいない。不思議に興味を持つ、わかる、さらに次の不思議が出てくる。そうすると自分の本当の好きなものにも出会える」と話す。
「限界探る」を目標
諸野さんの研究の目標は「生物が生きていられる限界を探す」こと。
諸野さんらの研究チームにより、海底下2・5キロメートルの地層や恐竜がいた1億年前の地層から微生物の生息が確認されている。
諸野さんは「酸素もなく、太陽光も届かず、水圧もある極限下でも生物は生きている。逆にいうと、生きていられなくなるのはどういう状況なのか。見定めることが『生き物が何で生きているのか』につながる」と研究への思いを話す。
角砂糖に1微生物
諸野さんは、海底下の微生物を見つける技術が「世界一」と評されている。諸野さんが研究を始めたのは2006年。当時はまだ、角砂糖ほどの大きさに微生物が「10万個以下」の生息数では、少なすぎて「わからない」とされていた。
諸野さんが考案した手法により、微生物を見つける精度が各段に向上。これにより現在、諸野さんは角砂糖に微生物が「1」個いれば見つけることができる。この手法を学びに世界の研究者たちが高知へ訪れるという。
「微生物を見つけるのは基礎中の基礎。知りたいことにたどりつくためにはまわりみちでも適切に組み立てることが大切」と話す。
今夏北極海へ
諸野さんは地層を掘り出す研究掘削船に乗り、今夏、北極海へ向かう。
掘削作業は世界23カ国が参加する国際プロジェクトで諸野さんは7回目の参加。他国の研究者と2カ月間船上で過ごす。
今回は1500万年前の地層を目指す。だが掘削は「7割が想定外」。目的とした地層が抜けていることもよくあるという。諸野さんは「どんなに達成度が低くてもポジティブな要素を見つけて、満足して船から降りる。ミミズクが船にやって来たとか、そういうことも含めてね」と話す。
八王子版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
<PR>