八王子の伝統芸能「八王子車人形」が3月23日、国の重要無形民俗文化財に指定された。同日、都内で指定書の交付式が行われ伝承者である八王子車人形西川古柳座(下恩方町)の座長、5代目西川古柳さん=人物風土記で紹介=らが出席した。都内では7件目の指定となる。※中面に関連企画あり
都内7件目 市内初西川古柳座が継承
江戸時代に始まりおよそ170年の歴史がある車人形。1825年(文政8)に現在の埼玉県飯能市に生まれた山岸柳吉(初代西川古柳)によって考案され、その後、関東一円に広まった。
八王子に伝えられたのは明治時代で、以来、西川古柳座によって継承されてきた。1962年(昭和37)に東京都指定無形民俗文化財、83年(昭和58)に東京都指定無形文化財、そして96年(平成8)に国記録選択無形民俗文化財に選択された。
車人形は、ろくろ車という箱形の車に腰掛けて、1人の人形遣いが1体の人形を操る人形芝居。八王子の他、埼玉県三芳町、東京都西多摩郡奥多摩町でも継承されている。
八王子車人形は説経浄瑠璃や義太夫節の語りとともに演じられる。演目は伝説や歴史上の人物を題材にしたものから洋舞までと多岐にわたる。海外公演も積極的で古典から新作に至る演目を披露している。一方、様々なジャンルとの共演も盛んで、ニューヨークの人形遣いとコラボレーションしたこともある。
なお、都内の重要無形民俗文化財は「板橋の田遊び」「江戸の里神楽」「小河内の鹿島踊」「神津島のかつお釣り行事」「下平井の鳳凰の舞」「新島の大踊」があり、八王子車人形は7件目となる。
文化財課に聞く
八王子車人形について市教育委員会生涯学習スポーツ部文化財課に話を聞いた。
今回の指定は「市にとって最高に名誉なこと」とし、「八王子市にゆかりのある文化財が国の重要文化財指定を受けるのは初めてです」と喜んだ。
今回評価されたことについて4つのポイントを挙げた。
【1】幕末から近代にかけての我が国の人形芝居の変遷を知る上で重要な人形芝居であるため
【2】下恩方村(当時)の瀬沼時太郎(2代目西川古柳)が車人形創始者に入門した明治前期から長きにわたって、瀬沼家の代々が中心となり、八王子唯一である車人形の伝承に尽力。現在も若手座員が多く育っており、伝統の継承と将来の発展が大いに期待されるため
【3】西川古柳座では江戸時代に制作された名工の首(かしら)、現代の名工の首だけでなく、代々の家元自作の首なども所蔵し、自ら遣う道具類を自作するという民俗芸能の伝統が生きているため
【4】八王子車人形に関する歴史的資料と現況の調査を詳細に記録した「八王子車人形調査報告書」が八王子市より2020年に刊行され、八王子車人形の全貌が明らかになったため
一方、今後の課題については「次の世代につながるサポーターを得ること」とし、「八王子車人形の一層の周知を図るとともに、公演やワークショップの機会を増やしていきたい」と話す。
観劇のポイント
なお観劇をする際は「あらすじを把握しているとより楽しめる」と予習を勧める。
また、ろくろ車に乗った人形遣いの動き、人形の首の生きているかのような繊細さも注目をしてほしいとし、「人形の足が地面を直接踏む。これは世界でも類例がないと言われる車人形ならではの持ち味です」と説明した。
次の世代へ
西川古柳座では後継者の育成にも力を入れており17年ほど前から、地域の児童らを対象とした子ども教室を開いている。
近隣に住む安部晃大さん(17)は小学6年のとき、同座が夏休みに開いている教室に通い一連の流れを教えてもらい発表会も体験した。「とても楽しかった。もっと知りたいと思った。自分も本格的にやってみよう」。親の手を借りず自ら家元へ電話をし中学1年のとき、入座した。
現在15人が在籍する同座だが安部さんのような年代による「若手の会」のメンバーは「古株」を上回り8人いる。継承について西川さんは「後継者を育てることも大切だが支えてくれる人を増やしていくことも大事。その中から遣い手も生まれてくるはず」と期待する。
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