東京工業高等専門学校(八王子市椚田町)の学生らが開発したシステムを生かし、規格外野菜をオンラインのオークションで販売しようという試みが動き出した。学生と、相模原市緑区内に拠点を構えるIT関連企業・アイフォーコム(株)、緑区役所の職員らが、森のイノベーションラボFUJINO(森ラボ・同区)で1月に会合を開き始動。新たな産官学連携による社会問題の解決に期待が寄せられる。
東京高専によるシステムの名称は「Vegeoku(ベジオク)」。曲がっていたり、傷が付いていたり、見た目の違いだけで廃棄されてしまう規格外野菜を農家側がオンラインで出品。消費者側がオークション形式で購入し、入札者は農家から現地で野菜を受け取る仕組みだ。
キックオフミーティングでは今後の方向性の確認や、フィールドワークとして実際の農家を訪問。意見交換などを行った。現在はシステムの最終調整の段階で、体制が整い次第、相模原市緑区の藤野地区でシステムの実証実験を行う予定。
フードロスなくしたい
同校の北越大輔教授が先導する「規格外野菜の有効活用プロジェクト」は、2019年にスタート。味は問題がないのに、廃棄されてしまう規格外野菜を「技術でどうにかできないか」と、八王子市内の農家から相談を受けたのがきっかけ。フードロスは社会全体の課題であり、SDGsにもつながるとプロジェクトを始動。農家とヒアリングを重ねる中で「規格外野菜は価格が分からないので値付けできない」という言葉をヒントにオークションの仕組みづくりに着手。約1年半で完成させた。
多くの実証実験を行いたい学生側の思いに対し、実証先が見つからなかった。そのような中、学生の採用を通して交流のあったアイフォーコムに相談が寄せられた。話を聞いた同社は緑区役所に話を持ちかけ、藤野地区での実証実験を視野に企画が進んでいった。
「相模原市とつながりを持てたことで止まっていたプロジェクトが動き出し、希望を感じた」と同校の学生。実証実験に向け、「出品してから購入まで滞りなくできるか。知らない人にシステムが伝わるのか。本当に農家さんが使いやすいのかを確認したい」と先を見据える。北越教授は「この段階で実験して、すぐに使えるまではいかないかもしれない。継続してきたものをフィードバックして失敗して、改良して、ある程度つくり上げられれば。実用化でフードロス、規格外野菜がなくなればうれしい」と期待を込める。
研究・採用に期待
一方、アイフォーコムでは過去に学生が開発したシステムを譲り受け、実用化しているという前例も。「中小企業としては、開発コストをかけにくい中で、産学連携によって人手やリソースを補える。連携することで学生に会社をアピールすることにもつながる。研究開発の加速、人材採用の両面で期待したい」との考えを示した。
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