文化庁が日本遺産として認定している、八王子の歴史文化で構成されたストーリー「霊気満山 高尾山〜人々の祈りが紡ぐ桑都物語〜」の構成文化財の30番目に、7月14日付で鑓水にある諏訪神社が追加認定された。
日本遺産は、地域に点在する有形・無形の文化財を一つのストーリーとしてまとめることで、観光振興など地域活性化につなげるもの。八王子市では高尾山や八王子城跡、絹の道など29の文化財で構成された同ストーリーが2020年に認定されている。
豪華な彫刻の社殿も
追加認定された鑓水の諏訪神社は、江戸時代末頃に生糸の取引で財を成した「鑓水商人」ら氏子の寄進で各谷戸に建てられた神社に端を発する。1877年(明治10年)に諏訪・八幡・子(ね)の権現の3社が、子の権現の社地に合祀された。
八木下要右衛門ら鑓水の生糸商人の寄進により荘厳な彫刻が施された3社の社殿は、市指定有形文化財(建造物)として本殿の覆屋内に安置されている。境内には寄進者として鑓水商人の名前が刻まれた石灯籠や手水鉢も残されており、拝殿には天井画や扁額、大絵馬もある。
井上良胤宮司は「鎮守の森の高所に祭られ、参拝者のためではなく、神様のために開かれたお社。鑓水地域の人々の信仰心のあつさと、生糸商人の思いが込められている」と説明。「それがこのような形で注目されたことをうれしく思う。参詣し、その時々の人々が鎮守様に寄せた思い、歴史や人々の暮らしに思いを馳せてほしい」と話している。
市文化財課は「史料の調査や整理をじっくりと進め、氏子の皆様の理解をいただきながら追加認定の準備を進めてきた」とし、「神社周辺にある構成文化財の『絹の道』や『八木下要右衛門屋敷跡(絹の道資料館)』などと共に、八王子と絹の深い関わりを示すストーリーの魅力が、より高まれば」と期待を寄せる。