児童出版文化の向上に貢献が認められる作品や作家を選定する「小学館児童出版文化賞」の第72回(2023年度)に、市内在住の遠藤みえ子さん(83)の『風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記』(佼成出版社/2022年)が選ばれた。遠藤さんは11月2日に市役所を訪れ、石森孝志市長に受賞を報告した。
1年間に発表された絵本や童話・文学の中から、作家や出版社、図書館などが優れた作品を選ぶ同賞。遠藤さんの作品は、予備選考を通過した13候補の中から受賞3作品の一つに選出された。
受賞作『風さわぐ北のまちから』は、終戦後に朝鮮半島に取り残された日本人家族が寒さや食糧不足、ソ連兵による略奪、北朝鮮の建国などの混乱の中を生き抜き、日本に帰り着くまでを11歳の「れい子」を主人公に描いた作品。遠藤さんの実体験を元にしている。
朝鮮半島の釜山で生まれ、6歳で岡山県倉敷市に引き揚げた遠藤さん。高校と大学で非常勤講師を勤め、著書『スージーさんとテケテンテン』で小川未明文学賞優秀賞を受賞した。『風さわぐ〜』は自身の稀有な体験を描き残そうと筆を執ったが、そこは幼い頃の記憶。強烈な印象が残っているが断片的な思い出を、母に尋ねるなど再構築して書き上げたという。2012年に一般向けに発表し英語版も出した同作品を今回、中高生向けに書き直して出版。「どの時代にも苦難や悩みはある。よく考え、信念をもって行動し、命と他者との関係を大切にして生きてほしいという願いを込めた」と話す。
受賞の報告を受けた石森市長は「当時のことを知る人も少なくなり、貴重な体験がまとめられている本。八王子の子どもたちに、ぜひ読んでほしい」と称賛した。
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