年頭にあたり、タウンニュースでは小池百合子東京都知事にインタビューを試み、書面で回答を得た。小池知事は多摩地域の2023年を振り返るとともに、24年の展望などを説明。「多摩の未来を共に創り上げていきましょう」と地域住民に呼びかけた。※2023年12月18日回答
昨年移管130周年
-八王子市、町田市、多摩市を含む多摩地域を中心に、2023年の主な出来事や施策の振り返りをお願いします。
「23年は、多摩地域が神奈川県から東京に移管されて130周年の節目の年でした。130周年記念の取組として、『超たまらん博』と題し、多摩を巡るデジタルスタンプラリーや記念イベントを開催しました。デジタルスタンプラリー『たまトレジャーハント』では、歴史や文化など地域の宝物であるおすすめスポット『たまらん』を多摩全域130カ所に設定。地域の様々な魅力に触れていただきました。130カ所全部をコンプリートした強者もいて、あらためて多摩のポテンシャルを感じました。10月に開催した記念イベントでは、約10万人の方々にご来場いただき、多摩30市町村等の皆さんと一緒に、多摩地域の多様な魅力を多くの方々に届けました。また、12月には、東京2020大会に加えて、1964年大会のコースを生かした本格的な自転車ロードレース『THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023』を初めて開催しました。プロ選手などのエリートやパラサイクリングの白熱したレースには、多くの観客が詰めかけ、目の前を疾走するロードレース観戦の魅力、生の迫力を楽しんでいただきました。あわせて開催した『STADIUM FESTA』や『チャレンジレース in 味スタ』では、多くの方に多摩地域や自転車の魅力を体感いただきました」
新施設続々
-2022年、『東京たま未来メッセ』(八王子市)が開業。続く23年も新たに都の施設がオープンしました。
「充実した子育て・教育環境や、緑あふれる自然環境など、多摩地域の持つ多様な魅力とポテンシャルを更に高めるため、様々な施設を開設しています。子どもたちが自信を持って世界に羽ばたけるよう、昨年1月、立川市に体験型英語学習施設『TOKYO GLOBAL GATEWAY GREEN SPRINGS』を開設。大きな反響をいただいています。10月には、オープンイノベーションの普及等を図るため、都有施設を活用し、新たに『オープンイノベーションフィールド多摩』を八王子市と国分寺市に開設しました。多摩地域等のイノベーションを支援するハブとして、ものづくり中小企業による開発の促進や中小企業の新事業創出、コワーキングスペース提供等、各種支援を展開しています。そして、『東京たま未来メッセ』は、22年10月に開設した産業交流の拠点です。都は、今年1月26日、27日に、多摩地域で最大級となる中小企業の展示会『たま未来・産業フェア』を開催します。多摩地域内外から企業や人が集まり、熱意と創意工夫で磨かれた優れた製品やサービスを知ってもらい、商談や製品体験を通じた交流により、新たな企業間連携やイノベーション創出の機会となってほしいと思います」
スマート東京目指し
-知事はデジタル化にも熱心に取り組まれています。
「都は、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出す『スマート東京』の実現を目指しています。スマート東京先行実施エリアの南大沢地区(八王子市)では、都立大、八王子市、地元企業及び通信事業者等の産学公連携により、先端技術を活用した分野横断的なサービス都市の実装を目指しています。昨年11月には、『南大沢スマートシティFES.2023』を開催。自動配送ロボット体験や都立大学ローカル5Gを活用したドローンの実証実験の紹介を通じて『ちょっと未来のまち』を体験していただきました。このほか、昨年9月に多摩地域の点群データを公開しました。これは国内最高精度の3次元位置情報データです。行政が様々な分析・シミュレーションに活用することで、多摩地域のまちづくりや観光、特に防災分野での取組に活かしていきます。加えてオープンデータとして民間での活用も促進します。こうした様々な取組を通じて多摩地域のプレゼンスを高め、持続的発展に向け全力で取り組んでいます」
ニュータウン50年
-多摩ニュータウン(多摩市)は入居開始から50年が経過しました。
「多摩ニュータウンは、初期に入居された地区では、団地の老朽化や住民の高齢化などの課題に直面していますが、現在、再生に向けて動き出しています。昨年10月に多摩ニュータウンの新たな再生方針を策定するため、検討委員会を設置。学識経験者や地元市等との意見交換を重ね、今年度中の方針の策定を目指しています。特に諏訪・永山地区は、多摩ニュータウンの第一次入居地区であることから、同地区の再生を多摩ニュータウン全体の再生のモデルとしたいと考えています。検討会議を設置し、永山駅周辺の再構築や、整備が進展している南多摩尾根幹線沿道の都有地の活用という2つのプロジェクトを進めています」
交通インフラ強化へ
-多摩地域の交通インフラの強化・充実にはどう取り組みますか。
「道路ネットワークの構築は、多摩地域の持続的成長の礎となるものであり、着実に整備を進めています。例えば、多摩ニュータウンを東西に横断し、稲城、多摩、八王子を経由し、町田に至る南多摩尾根幹線は、調布保谷線経由で埼玉県につながるなど、都市間連携も強化する重要路線です。都は現在、全線4車線化に向けた整備を進めています。そして多摩を南北に縦断する多摩都市モノレールは、多摩の成長に欠くことができない基幹的なインフラです。都は上北台から箱根ケ崎方面への延伸について、都市計画等の手続きを進めています。多摩センター駅から町田方面への延伸については今年度、多摩市と町田市がまちづくり構想の策定を目指しており、都もオブザーバーとして検討会に参画しています。また、沿線住民をはじめ、親子でお出かけしやすい環境の創出にも取り組んでおり、多摩都市モノレール株式会社の協力の下、『たまモノ子育て応援事業』を実施しています。以前から販売している子どもの一日乗車券に加え、今年度から、子どもと大人が一緒に多摩モノレールをお得に利用できる一日乗車券の販売を始めました。1月末までご利用いただけるので、ご家族でのお出かけなどに活用してほしいと思います」
魅力一層高める
-多摩地域で暮らす都民へメッセージを。
「30市町村で構成され、約429万人が暮らす多摩地域は、多様な魅力とポテンシャルを有するエリアです。コロナ禍を経て、人と人とのつながりの大切さが再認識され、暮らし方や働き方に新しい価値観が生まれました。地域の課題に向き合い、多摩地域の更なる発展につなげるため、多摩の振興計画を改定します。市町村等の意見も踏まえながら施策を取りまとめ、多摩の魅力をより一層高めていきます。『住んでよし』『働いてよし』『訪れてよし』、3つのよしの多摩地域の魅力を更に高め、賑わいと活力に満ち溢れた輝く多摩の未来を共に創り上げていきましょう」