任期満了に伴い1月21日に実施された八王子市長選挙の結果を受けて、八王子市役所で市長の退任式と初登庁が行われた。3期を務めた石森孝志氏(66)から、新市長に当選した初宿(しやけ)和夫氏(59)に市政の舵取り役が移り、八王子市の新たな航海が始まった。
新市長の抱負
初宿氏は、29日に初登庁。駆けつけた支持者らと出迎えた市職員から花束を受け取り、市民から「頑張れよ」などの声援や拍手を受けながら、晴れやかな表情で執務室へ向かった。「政治活動のスタートを、直接市民に語りかけるところから始めたかった」とこの日の朝、八王子駅と西八王子駅の駅頭に立った初宿氏。あらためて市民を守っていく重責を実感したと語り、市職員への初訓示では「相談に訪れる市民にとって、皆さんが最後の砦と思って職務に励んでほしい。私一人の力では何もできない。仲間として、市民のため一緒に汗を流していこう」と呼びかけた。
続いて臨んだ記者会見では「災害などから市民の生命と財産を守ることが第一。都内唯一の日本遺産である高尾山など八王子の持つ魅力に磨きをかけ、地域経済界とも連携して産業振興にも取り組んで、多摩地域から東京、日本のリーディングシティーを目指していきたい」と抱負を語った。
選挙戦で掲げていた学校給食費の無償化や、災害時の避難先となる小中学校体育館への空調機設置などの公約については「編成が進んでいる次年度予算案や財源、都の助成制度などを確認しながら、できるだけ早く進めたい」と展望。また2025年度に三井アウトレットパーク多摩南大沢の敷地を含めた駅前都有地の定期借地契約が切れる問題については「賑わいが途切れることが無いよう都と連携を図る」とし、多摩ニュータウンの再整備にも意欲を示した。隣接する相模原市にリニア中央新幹線が開通することについては「近隣自治体で連携したまちづくりが必要」と広域連携を推進する考え。
「選挙でも訴えてきた『三方よし』の理念の中の『世間よし』にのっとり、最後は市民にとって良いことかを判断材料に市政運営をしていきたい」と新市長としての意気込みを語った。
公約「ほぼ達成」感謝の退任
石森氏は26日に退任の記者会見を開き「市民との協働やスピード感を意識しながら、ほぼすべての公約、思い描いていた事業を達成できた」と3期12年の市政運営を振り返った。その中でも2015年の中核市への移行を一番印象に残っている仕事に挙げ、「市民サービスの向上や市民の誇りの醸成につながったと思う」と述べた。
後継として市政を引き継ぐ初宿新市長については「初宿カラーを出しながら、市の発展のためにリーダーシップを発揮してもらいたい」と期待。自身の今後については「まだ白紙。街中をのんびりと歩いて回るなど、在任中にできなかったことをしたい」と朗らかに語った。
退庁セレモニーでは見送りに集った市職員や支持者、家族から花束を受け取り、盛大な拍手に包まれて庁舎を後にした。