小比企町にある磯沼牧場を舞台にしたフォトエッセイを出版した写真家の 高田 千鶴さん 下柚木在住
牛が教えてくれたこと
○…牛専門写真家と名乗る。2009年には牛だけを載せた写真集を制作。今年6月には、牛の撮影のため15年以上通う磯沼牧場の写真と、エッセイを組み合わせた書籍を出版した。牛の穏やかな風貌は可愛いらしく、見る者に癒しを与えてくれるが、肉牛は食用となるため、悲しい運命を辿ることになる。その重みを受け止め、「命の大切さに気付くきっかけになれば」と思いを託す。
○…大阪府出身。入学した農業高校で雄牛の面倒を見ることになった。いずれ解体場に送られることが決まっている。何のために生まれて来たのか。どんな気持ちで接すればいいのか。「とにかくこの子が生きて来た証を残さないと」とカメラを手に取った。以来、牛の何気ない表情や、彼らが暮らす牧場の様子を撮り続けてきた。
○…30代の頃、越してきた下柚木と磯沼牧場は車で数十分の距離。「こんなに近くに牛がいるなんて」。牧場主に頼み込み、時間があれば撮影に赴くようになった。作品の特徴である、牛たちの一瞬の表情を切り取るコツは、ずばり「忍耐」だ。牛たちの傍らに忍び、声をかけ、時には一緒に昼寝し、ひたすら「一瞬の表情」を見せてくれるのを待つのだ。
○…2児の母でもある。子どもたちにも命の尊さを知ってもらうため、何度も牧場へ連れ立った。長男が小3の頃、牛の内臓を食す機会があり、「お肉になるために生まれたんだね。ごめんだけどありがとう」とつぶやいた。「可愛い牛」と、「食料としての牛」が、「子どもの中でちゃんとつながっているんだな」と感じた。牛が教えてくれたことを、我が子だけでなく、全国の子どもたちにも伝えたい。そんな使命感を胸に、今日もレンズ越しに牛を追い続ける。
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