不動産や建物の総合管理事業などを手がける(株)エイト(本社・明神町)の代表取締役社長・門倉裕さん(55)が、厚生労働省の2024年度「卓越した技能者(通称:現代の名工)」の1人に決定。コンクリート床を研磨し、表面を鏡のように磨き上げる技術の第一人者として表彰された。
この制度は、金属加工や機械器具組立・修理、衣服の仕立、大工など、その道で第一人者と目されている技能者を表彰する制度。技能の世界で活躍する職人や志す若者に目標を示し、優れた技能を次世代に承継していくことを目的に1967年から行われている。今年度は職業別で全22部門・138人が表彰された。
門倉さんは「コンクリート機械運転工」として表彰された。第一人者とされるコンクリート床研磨とは、空港や商業施設、オフィスビルなど、海外では主流の仕上げ方。経年変化などが原因でヒビや傷が入り、腐食したコンクリート床の表面を削り直し、特殊な薬剤を調合した修復材を塗布し研磨加工を繰り返すことで、まるで大理石のように仕上げることができるという。
コンクリートの種類や材質を分析して刃の硬度や回転数を算出したり、より滑らかな表面にするための薬剤選びなど難易度は高く、工法は知っていても門倉さんほどの滑らかさで仕上げられる技術者は世界でも珍しいという。
厚労省からも「独自の工法により磨き上げることは簡単にはまねできない技術」と評価された。
門倉さんは表彰を受け、「うれしかった。推薦してくださった八王子商工会議所に感謝している。この技術は、省エネやエコにつながっている。地球環境のためにもなるので、広めていきたい」と話した。
1988年に創業し、不動産や建物総合管理事業、米軍・海外事業などを手がける同社。「コンクリート研磨」の分野に門倉氏が着手したのは、約15年前。米軍基地からの需要に応えるため、知識も経験もない中、手探りで実験を繰り返す日々が始まった。「ピカピカに仕上げるのは、最初はすごく難しかった」と振り返る。海外から研磨のための専用機械を取り寄せて分解したり、休日返上で開発と向き合った。門倉さんは「お客さんを驚かせたいという気持ちが原動力。会社としてここまで挑戦させてもらえたのも大きい」と開発環境への感謝を述べる。
今後の目標を尋ねると「宇宙」と一言。材質と薬剤を掛け合わせて磨くというその特殊な技術は大学教授からも注目されており、「宇宙開発の一翼を担えるかも」と夢を描く。「とにかく行動して、可能性があるものはなんでもやってみたい」と門倉さん。