節目となる創立50周年を経た今年度。新たなスタートの舵取りを任された。造形大学には2005年に教授として着任。リサイクルを念頭においた、デザインや社会の仕組みなど、ものづくりと環境問題の関係について指導してきた。「自由闊達」に活動できる大学とすることで、学生が様々なことにチャレンジできる環境にし、社会に出てから活躍できる人材の育成につなげたいと考えている。
その思いは大手家電メーカーの開発者であった自身の経験から生まれている。「初期のウォークマンなどを担当していました。現場が自由で愉快な場所であったからこそ、先進的な製品が誕生していったんだと思うんです」
幼い頃から、ものづくりが好きだった。自分でボードゲームや、車を運転する気分が味わえる「ドライブゲーム」なるものをつくり、楽しむ毎日を送っていた。「常に使う人のことを考えながら、わくわくした気持ちで創作していましたね」。その遊び心が今も原動力になっている。
2年前、趣味のひとつとして取り組んでいる物書きで生んだノンフィクション作品が、大手スポーツメーカーが主催するスポーツライター賞を射止めた。多忙のなか取材を重ね、「これまでにない視点」で描かれたスポーツ現場が評価を受けた。取材中、「モノにこだわる」開発者時代の自分の気持ちと重なる部分があり、共感し涙が止まらなくなることもあったという。
常識を嫌う。そのため、学長の肩書をもった今でも、学内ではスーツよりもカジュアルな服装でいることが多い。「先生と呼ばれたら、その人が『決まってしまう』。常に『素人なので教えて下さい』というスタンスで学生らとも向き合っています」
56歳。現在も生まれ育った東京スカイツリーのそばに住む。「大いなる素人」が市内屈指の美術大学に革新をもたらす。
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