ニュース番組や講演会などで、一度は「手話通訳」「要約筆記」を見たことがあるだろう。それぞれ、聴覚に障害のある人や高齢で耳が聞こえづらい人などの情報取得を支える方法だが、どのような思いで活動をしているのか。実際に活動している人に話を聞いた。
8月4日、旭町の八王子市学園都市センターの一室。八王子空襲や広島原爆の体験者・被爆者が一般聴講者に向け戦争の悲惨さを訴える「語り部」が行われていた。
話者の傍らで、話す内容を素早く手話に変換する女性が1人。2人体制で交代しながら「戦争」や「逃げる」などの単語を紡いでいく。
下柚木在住の江草尚美さん。「ドラマでしか見たことがなかった」という手話だったが、たまたま市主催の手話講習会の募集が目に留まった。2年間通った後、手話サークルにも入会。さらに技量を身に付けるため、「八王子市手話通訳協力者の会」の一員として活動を始めて11年になる。
もう1人、話者の傍らで黙々とペンを走らせている女性がいる。原爆の当日の情景を即座にわかりやすい短文に直し、手元の紙に書き込みスクリーンに映し出す。こちらも交代制で、話者の熱がこもればこもるほど、単語量も増えるスピード勝負だ。
川口町在住の若松理惠さんは、市や東京都の要約筆記者として登録して約10年。「聞こえに困る人の支援になる職種」と使命感を持って活動する。話の早さに遅れないよう、話者の意図をいち早くつかむことに注力する。最近のテレビには字幕サービスもあるが、「短い文章で早く伝えることが利点」という。
社会参加支え
両者に共通するのは、手話や要約筆記で「情報の保障」を担い、「誰もがいつでも安心して参加できる社会」を目指している点だ。江草さんは「『伝える』ではなく『伝わる』ことを念頭に今も手話の勉強を続けている」と日々研鑽し、若松さんは「多くの場で要約筆記がスタンダードになることを願っている」と展望する。
市障害者福祉課によると現在、市の派遣事業に登録しているのは手話通訳者40人、要約筆記者17人。依頼があった催しに対し派遣され、活動に対して謝礼が支払われる。
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