八王子消防記念会が10月16日、日光東照宮(栃木県)で木遣を奉唱し、はしご乗りの演技も披露した。同所での奉唱・演技披露は1958(昭和33)年10月以来、66年ぶり。今年、八王子市と日光市の姉妹都市盟約締結から50周年を迎えるのを機に行われた。
八王子消防記念会は1957(昭和32)年結成。江戸町火消の流れを汲む八王子市消防組を前身とし、とび職を中心とした会員が集い、消防の歴史と文化の伝承に精進している。中でも、重い木材などを引くときのかけ声から生まれた作業唄「木遣」は、市の無形民俗文化財(郷土芸能)に指定されている。
当日朝、約45人の会員らは、新しい竹で作り直した4間(約7m20cm)のはしごと、火消し組の旗印の纏(まとい)を大型トラックに載せ出発。日光東照宮で正式参拝した後、秋季大祭の行事として行われた流鏑馬の会場で奉唱した。「海外の方など、たくさんの人前で披露できた。厳かな場所で身が引き締まる思いだった」と話すのは副総代の青木孝志さん(71)。同じく副総代の坂本幸夫さん(73)も「名誉なことで感激した。今後の人生で二度とない機会」と話した。東照宮からは同会へ感謝状と記念品の日光杉が贈られた。
東照宮との縁は、江戸時代に幕府の家臣団として千人町に暮らしていた「八王子千人同心」から始まる。千人同心は東照宮の防火と警備のため、「日光火の番」を務めた。境内や町内を見回り、火事になれば消火活動にあたるなど、重要な役割を担った。現代まで文化財が燃えずに残ったことなどをたたえて境内に建てられたのが「八王子千人同心顕彰碑」だ。
顕彰碑の除幕式に同会が参加し、木遣を奉唱したのが66年前。当時22歳で参加した吉水利夫さん(88)によると、少数精鋭の60人で訪れ、1から10番組までの纏をふりながら参道を歩いた。父の清太郎さんが木遣師を務め、木遣とはしご乗りを披露したという。吉水さんははしご乗りを任された当時を振り返り「緊張しないようにって演技前に肩を揉まれた記憶があるよ」と思い出を語る。
安藤謙治会長(79)は「会員減少など課題はあるが、日本遺産に認定された八王子の伝統文化の一翼を担っている自負がある。これからも、木遣の保存・継承に全力で努めたい」と話した。
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