「戦乱の世を経て、和解の鐘の音よ今に響け」――。鎌倉幕府の創成に尽力し、後に敵対する三浦一族と北条氏の両研究家らが今月19日、多摩市のお隣の小野路町(町田市)の小野神社で交流会を催し、親交を結んだ。同神社には両氏にゆかりの深い宮鐘の複製があり、代表者が鐘を一緒について友好と平和を祈願した。
会を企画したのは、神奈川県三浦市で建築設計事務所を営む安達則子さん。新井城や三浦一族について研究しており、昨年5月、調査の一環で八王子城址を訪れた際に八王子研究の第一人者として活躍する郷土史家の前川實さんとの出会いがきっかけだった。
三浦・北条の両氏は、同じ時代を生きた武将で、覇権を争って武力衝突。約500年前、戦いに敗れた三浦一族は、油壺で滅ぼされたという因縁があるが、それぞれが地元の武将を愛する研究者として意気投合。両氏に光を当てた小説を双方で執筆していることなどもあって、親交を深めることを決めたという。
音色に平和の祈り
会が開かれた小野神社には、先の戦いで攻め手の北条早雲が、最大のライバルだった三浦義同(道寸)を滅ぼした際に打ち鳴らした陣鐘の複製が奉納されている。
もともと応永10(1403)年に、小野路村の僧が交通安全を祈願して奉納。朝夕、旅人に時を知らせたもの。その後、戦国時代に起こった両上杉の合戦で、山内上杉の兵により陣鐘として持ち去られたあと、北條早雲の手へ。地誌「三崎誌」によると、三浦一族との戦いでは三浦市南下浦町菊名に吊り下げられていたとされる。
現在は、神奈川県の重要文化財に指定され、逗子市沼間の海宝院で保管(非公開)。同神社には、多摩市の篤志家よって復元寄進された鐘が境内に設置されている。
この日参加したのは、安達さん、前川さんのほか、市民グループ「八王子城跡オフィシャルガイド」のメンバー、5歳から三浦一族に魅了されているというギャンビル・ウイリアム・海音くん(三浦市在住)ら。町田市で資料館を運営する小島政孝さんによる鐘の由緒や音色に関する解説に耳を傾けた。
最後に「和解の鐘」と称し、三浦一族の家紋入りの甲冑に身を包んだ海音くんと前川さんが手を携えて鐘を鳴らし=写真=、両武将に思いを馳せた。
安達さんは「三浦一族が聞くことのなかった合戦の終わりを告げる音色」と感慨深げに話し、「私自身、(滅亡に追い込んだ)北条氏をどこか許せない思いもあったが、こうして鐘をつけて嬉しい」と語った。
![]() 逗子市の海宝院にある陣鐘。総高さ100.6cm、鐘身78.0cm、口径52.0cm(非公開)
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