新たな多摩のブランド野菜に――。市内の農家有志で現在、新たな栽培方法による「アスパラガス」の生産に取り組んでおり、今その収穫時期を迎えている。このアスパラガスは、従来の栽培期間によらず、1年で収穫できる「採りっきり栽培R」で生産。都市農業の課題を解決する糸口として注目を集めるだけでなく、都市近郊栽培による新鮮さが特徴だ。生産者の一人である小暮和幸さんは「今後多摩のブランドにしていけるようにみんなで検討していきたい」と抱負を語る。
市内の農家4軒でアスパラガスの栽培を始めたのは2017年。前年に明治大学で行われた「新世代アグリチャレンジャー育成講座」に多摩市農業委員会と一部の農家が参加し、紹介されたのがトマトの「ソバージュ栽培R」と、この「採りっきり栽培R」だった。
アスパラガスは従来、10年以上一つの苗で収穫が続けられる一方で、栽培に手間暇がかかり、農業従事者の作業負担が大きく取り扱いが難しい野菜とされている。そうした栽培の問題を解決しようと、明治大学の元木悟准教授のアイデアをもとに、同大の野菜園芸研究室と種苗メーカーのパイオニアエコサイエンス(株)で開発したのが「採りっきり栽培R」だ。専用の器具「ホーラー」を使って深植えし、地温を確保するという画期的なこの栽培方法。これまで苗を植えてから収穫までに3年ほどかかっていたところを1年に短縮。若い苗のため、病気や虫がつきにくく、2年目以降を考えずに春先にできたアスパラガスを収穫できるため収穫量が見込める他、刈り取った後に同じ畑で輪作できるのも特徴だ。
レストランにも提供
そうした点に着目し、市内ではアスパラガスの生産をしている農家が少なかったことから、市内の4軒の農家で苗を購入。2017年から、明治大学の指導を受けながら試験的に栽培を始めた。1年目は各農家で30株ほど栽培したところ、かなりの量が収穫でき、小暮さんの農園では700本ほどになったという。
昨年からは、新たに2軒の農家が参加し、各農家が苗をさらに増やして栽培。今年3月末頃から収穫が始まった。小暮さんは「ハウスなどの施設がなくてもできるのが特徴。1年目は暖冬だった影響か思った以上に収穫できた。今年は、昨年に台風が多かったことや、突然の大雨やヒョウもあり難しかった」と話す。
収穫したアスパラガスは都市近郊栽培のため、地方産の輸送されたものと比べると、切り口から水分が滴るほど新鮮で収穫後一日ほどは生で食べられるという。聖蹟桜ヶ丘駅前で開かれる「いきいき市」(毎週月・木曜午後1時30分〜)やJA東京みなみ多摩支店の「朝市」(毎週水・金曜午前8時45分〜)、同支店の「グリーンショップ多摩」、グリナード永山1階のアンテナショップ「Ponte」で販売されており、毎回売り切れになるほど好評を博している。今年3月からは、田町のレストランでも週に一度、東京産のアスパラとしてメニューで提供されている。
小暮さんは「まだまだ始めたばかり。失敗して経験を重ねていかないと。現状は品不足なので、今後は安定して供給ができるようにしていきたい。多摩の名物にできるように、生産しているみんなで話を詰めていきたい」と抱負を語った。
ブランド野菜に期待
市内では、農家有志で「ソバージュ栽培R」によるトマトを「健幸トマト」と名付け、多摩市の特産にしようと生産を行っている。多摩市のブランド野菜として地域を盛り上げるための特産品づくりに、市内農家の挑戦は続く。
多摩版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|