多摩商工会議所が「桜の街 多摩」を広めようと取り組みを進めている。2008年に立ち上げた企画の名称は多摩桜プロジェクト。啓発を進め、街の魅力向上につなげたい考えだ。
プロジェクト設立の背景にあったのが、危機感。現在多摩市のある地は元々、古代より桜の名所となってきた場所で、江戸時代後期に現在の連光寺周辺にヤマザクラが植えられて以来、同地域周辺の丘陵地は桜の名所として知られるようになった。
しかし、07年当時、新住民が増えていくなかで次第に「桜の街 多摩」という声が市内外で聞かれなくなっていたことから、危機感を覚えた当時の商工会議所の会頭がプロジェクトを企画。「桜を多摩に暮らす人々の希望のシンボルにしたい」という思いのもと、活動が始まった。
取り組みは多岐に渡ってきた。桜の専門家らを招いたシンポジウムを開き、市民らへプロジェクトの周知を図ってきたほか、桜の名所となっている聖ヶ丘の都立桜ヶ丘公園で、ヤマザクラの種の採取会を開いたり、春に市内にある桜の名所を市民らで巡る「多摩桜ウォーク」と呼ばれる催しを開催するなどしてきた。長年、事務局として活動を見守ってきた商工会議所の渡邊剛さんは「多摩のヤマザクラの保存と育成を柱に活動してきた。活動が10年を超え、市内でも多摩のヤマザクラの周知は進んできたと思う」と振り返る。
交流生むきっかけに
多摩桜プロジェクトは市と国内外の街との交流も生んできた。
そのきっかけとなったのが、取り組みの柱の1つである「宇宙(そら)桜」事業だ。宇宙から帰ってきた種を育成し、再び花を咲かせる様子から命の尊さなどを学ぶ、JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)らが実施している企画に賛同し取り組みを始めたもので、その宇宙桜の苗を分けてもらい、市内に植樹することで、関連する地域との交流を果たすことになってきた。
これまで市内に植樹された「宇宙桜」は、岡山県真庭市の醍醐桜や、岐阜県岐阜市の高桑星桜など5種類で、現在、プロジェクトの窓口となっている商工会議所の守屋雅子さんは「機会があり、全米50州に多摩のヤマザクラの種を贈呈したこともあります。多摩桜プロジェクトは海外とのつながりも生んでくれました」と笑顔をみせる。
100年先見据え
一方で、プロジェクトは昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた催しを実施できないでいる。
そんななかでも、守屋さんは「このプロジェクトは100年先を見据えての取り組み。焦らずに進めていきたい」と話し、今年も多摩のヤマザクラの種を採取し、苗を育てた上で市内にヤマザクラを植樹していきたいとする。そして、『桜の街 多摩』の魅力を発信し、世界の皆さんと交流を深めていきたい」と語っている。
![]() 関連イベントの一コマ。地域の交流を生んできた
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