60歳以上の多摩市在住者に就業機会を提供している多摩市シルバー人材センターの登録会員数が昨年度、前年度比で130人以上の増加をみせた。コロナ禍で各地のセンターが会員獲得に苦戦するなか、年会費を免除するなどの取り組みが注目を集めている。
シルバー人材センターは高齢者の雇用に関する法律によって定められる公益社団法人で、働くことを通じた生きがいづくりの場を高齢者に提供することを役割とする。
基本的に各自治体ごとに設けられ、現在は全国におよそ1300カ所に及ぶが、コロナ禍のなか、センターの会員数は減少傾向にある。
そんな状況で市センターの会員は昨年度、2019年度の1001人から1137へと136人増加。全国シルバー人材センター事業協会に加盟する団体のなかでその数は全国3位にあたる増加で、対前年度比でみた増減比は、多摩よりも人口の多い上位2つの市(神戸・鹿児島市)を上回った。
年会費を免除
市センターが大きく会員数を伸ばした要因の1つが年会費(昨年度は4490円)の免除だ。
コロナ禍で仕事を失う人が増えるなか、負担少なく仕事を得やすい環境をつくるための処置だったものの、そのおかげもあり、これまで伸び悩んでいた女性の登録を増やすことができた。
取り組みをまとめた市センターの常務理事で事務局長を務める安宅理さんは「その他、ハローワークと協力して周知に励んできた成果と考える。現在も会員は増え続けている」と話す。
問合せ殺到
この試みは各地のシルバーセンターで驚きをもって取り上げられたようだ。
全国のセンターに配布される機関紙で紹介され、各地から年会費免除などに関する取り合わせが安宅さんの元へ相次いだという。
「各センターとも独立採算制で運営している。免除した分をどう補ったのかなどの質問をもらった」と安宅さん。そして、「経営努力で乗り切っている、と答えている。センターは会員がより多くいてこそ成り立つ。その分、請負、派遣の仕事をたくさんもらえるよう努力しています」と笑顔をみせる。
背景に経営意識
柔軟な対応の背景には、市センターの経営方針の転換がある。
数年前に民間の企業に勤めていた会員が会のトップとなる理事長に就くと、安宅さんらと共に会員ファーストの経営を目指して改革をスタート。それまで「顔役」だった理事長が常勤で経営に参画できるようにし、しがらみによって意見や要望が出しにくくなっていた地域別のグループ分けを廃止して会員の自由度を高めるなど、会員ファーストの環境を整えてきた。
安宅さんは「事務局が主導していた以前の体制のままだったら、慣例と異なると年会費の免除などできなかったと思う」と話し、「『運営する』から、『経営する』に視点が変わったことが大きい。今後も当センターが全国のセンターの模範になれるようにしていきたい」と意気込みを語っている。
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