帝京大学文学部の准教授、平野淳平さんが先ごろ、多摩や八王子市南部を流れる大栗川周辺に多数分布していた日向と日影という昔の地名が日照条件と関係していることを示すデータをまとめた。元々、日照条件と関係する地名は山岳地域などでみられる傾向にあるが、多摩地域のような比較的なだらかな丘陵地で確認できるのは珍しいという。
平野さんの専門は気象データが残っている明治期などの気候について調査・研究にあたる歴史気候学。今回のデータは大学の講義で使用するため、多摩と八王子の市境に位置する大学周辺の昔の気候などを調べた結果という。
平野さんが大学周辺を多摩ニュータウン開発が進む以前の様子が分かる地形図でみてみると大栗川周辺にある谷斜面に面するところなどに日向や日影という地名が多数分布。地理情報システム(GIS)を基に冬至時期の日照時間の分布図をつくり、日向と日影の地名分布と重ね合わせてみると、日向は日照時間が長い南向きの斜面に。日影は北向きの斜面の崖下などに位置していることが分かったという。
パネル設置にも
「多摩でいえば和田地域で。その他、八王子の大塚や堀之内、松木などで日照条件と関係する地名が使われていたようです」と平野さん。日向や日影は起伏の激しい長野県の山岳地域などで使われているという研究例はあるものの、比較的標高が低く、幅の広い谷地形が発達した多摩地域などの丘陵地でみられるケースはあまり聞かれないという。
見つかった地名は和田日影や松木日向、堀之内日影など。また、大塚日向と大塚日影のような対になっているものもあり、八王子市南部ではバス停や公園、自治会の名称として今も使われていることもあるという。今年に入り、このデータをもとにした講義を行ったところ、学生らは興味をもって話に耳を傾けていたといい、平野さんは「これらの情報はソーラーパネルの設置場所を検討する際などにも役立つのではないかと思っています」と話す。
一方で、「日向はポジティブ、日影はマイナスイメージにとらえられがちですが、真夏の日影はオアシスのようなもの。そんな思いもあって名づけられた可能性もあるのではないでしょうか」と微笑んでいる。
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