多摩センター駅に近い多摩ニュータウンの一角、八王子市・松が谷住宅で団地再生の取り組みが進んでいる。住宅内にある商業用の空き店舗部分を地域の交流拠点にして、団地を人の集まるスポットにしていく事業。多摩市の愛宕第二住宅でも活性化に向け、取り組みが始まっている。
「ここには何ができるの」「工事を手伝わせて」――。3月下旬の松が谷住宅内1階に位置する商業用スペースの一角。今年7月の完成を目指し工事が進む「地域交流拠点」の予定地に近隣の小学生たちが顔をみせ、工事スタッフらとの会話が弾む。高齢化が進む団地と呼ばれてきた同住宅周辺ではこの1年で活気が生まれ始めている。
昨年の3月以来
仕掛けたのは全国の過疎地などのコミュニティ再生に取り組む一般社団法人コミュニティネットワーク協会の顧問である高橋英與さん。2020年に団地を管理するJKK東京(東京都住宅供給公社)から協会が団地再生事業の依頼を受け、昨年の3月に地域住民に向けて説明会を初開催して以来、団地周辺のコミュニティ再生に取り組んでいる。
交流拠点予定地にスタッフを常駐させ、立ち寄る団地住民らの暮らしの悩みを聞いたり、地域の活性化について考える勉強会や催しを開催。地域住民との交流を深め、1つ1つの悩みに迅速に対応することで地域からの信頼を集めてきた。拠点予定地には協会が企画した催しなどに参加した小学生や高校生が立ち寄るようになり、シャッター通り化していた交流拠点予定地と並ぶ商業スペースには相次いで飲食店などが入居するようになった。
高橋さんは「多摩市内で飲食イベントを開く団体もこの団地内で催しを開催してくれるようになった。口コミや噂を聞きつけて人が集まるようになっている」と笑顔をみせる。
7月に完成
ただ、高橋さんの「仕掛け」はこれからが本番。交流拠点とする施設の完成が7月と目前に迫っているのだ。長くシャッターが下りていたスーパーマーケットのあった300坪の店舗スペースに、カルチャー教室やトレーニングスタジオ、総菜の製造販売所なども並ぶ住民が交流できるスポットをつくり、活気を生んでいく計画を立てる。
「いよいよ、これから」と考える高橋さんのなかには、地域住民らの現状を変えたいという思いを強く感じた「事件」があったという。実質的な活動のスタートとなった3月の住民説明会。高橋さんら協会側から説明会としながら団地再生に関する具体的なプランの提示がないことに会場からは「何も決まっていないのか」といった怒号が飛び交うことに。ただ、話を進めていくうち、「なら、一緒に活性化策を考えよう」と住民と気持ちが1つになっていったのだという。
「具体的なプランを提示しなかったのは予定通り。地域のコミュニティを生むのはあくまでも住民。皆さんで一緒になって街のことを考えてもらいたかったんです」と高橋さんは振り返り、会場となった部屋がいっぱいとなるほどの参加者の姿に「地域を変えたい」という住民らの思いを強く感じることになったという。「やはり、うれしかったですね」
愛宕でも
一方で、高橋さんが再生を依頼されたのは、住民の高齢化が進む愛宕第二団地も含まれる。今年に入り、住民説明会を開き、同団地に合ったやり方で新たなコミュニティを生んでいきたいとする。「松が谷、愛宕ともそれぞれ3年ぐらいを目途に取り組みを進めていきたいね」とし、団地再生に取り組むなか、高橋さんら協会が関与しなくなっても地域コミュニティが保てるように街を支えてくれる人材育成にもあたっていきたいとする。「それも目的の1つ。多くの方にこの取り組みに参加してもらいたいと考えています」
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