多摩市内の認可保育所や認定こども園などに所属する保育士らが集まり、子育てに関する議論を重ねている。テーマは各園が抱える細かな課題から社会問題となっている事柄まで。客観的に保育について学ぶことができる学識書を基にテーマごとの解決策を導き出し、共有したものは各園で生かされている。
「それは本当に子どもたちのためになるの」「素晴らしいアイデア。私たちの園でも採用していきたい」――。9月上旬の多摩市役所内の一室。有志で集まった市内保育施設の主任クラスの保育士らが議論を交わす姿がみられた。2011年から始まった保育士らで構成される多摩市保育協議会の研修会。1班5人程。1つのテーマごとに意見を寄せ合い、グループごとにそれぞれの仮説を発表したうえで、「解決策」を絞り出し、共有していく。ディスカッションを支えるのは保育を客観的にとらえる「ものさし」として世界各地で流通する学識書。保育士それぞれの主観で保育と向き合うことにならないよう会の「教科書」にしているという。
「複雑に多様化していく保育に対して、皆で解決策を練ろうと立ちあげた会。公立、私立関係なく集まり、定期的に研修会を重ねてきました」と協議会のまとめ役となっている市内で保育園を運営する元井由隆さん。同会では保育に関する議論のほか、所属するメンバーが保健・看護や栄養士など、それぞれの専門とする部門に分かれての勉強会なども開催しているといい、同会に協力する多摩市の子ども青少年部の植田威史課長は「多摩の保育の質を上げてくれていると思う。ありがたい限り。引き続き、多摩の子育て環境向上に力を傾けてくれれば」と期待を寄せる。
「スムーズに」
実際、成果はあがっているようだ。研修会に参加している保育士の一人は「1つの事柄に対して、保育士同士が意見をぶつけ合うことで、互いの理解を深め合うことにつながっている」と話し、別の参加者からは「学んだ基準を勤務する園に持ち込んだところ、保育の流れがスムーズになった」などの声があがる。
同会の研修会で講師を務めるなど、協力する東京大学大学院で教育学に関する研究を行っている遠藤利彦教授は「子どもの心身発達の鍵を握るのは身近にいる大人の関わり方。多摩市保育協議会はその大切さを認識したうえで取り組みを進めている。活動が周辺自治体にも広がっていけば、多摩地域の保育環境はより充実するのではないかと思う」と話している。
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