第46回衆議院議員選挙が12月16日の投開票で実施された。大和市・座間市・海老名市・綾瀬市を選挙区とする神奈川13区は、自民党前職で党政務調査会長の甘利明氏(63)=9期が10回目の当選を圧勝で果たした。前回選挙で甘利氏を抑え、小選挙区で勝利した民主党の橘秀徳氏(43)=1期は比例区での復活当選もかなわなかった。
橘氏「再起を期す」
衆議院が解散された11月16日の時点で、民主党前職の橘秀徳氏と自民党前職で党政務調査会長の甘利明氏、みんなの党からは県議の菅原直敏氏(34)、共産党の党地区役員、宮応勝幸氏(69)の4人による戦いが予想されていた。
そうしたなか、投票日まで1カ月を切った11月21日に、日本維新の会が元海老名市議の太田祐介氏(38)の擁立を発表した。
この日午前に菅原氏が県議会に辞職願を提出。午後になり維新の会が同じ県庁で候補者擁立の会見を開いた。この日、本紙の電話取材に応じた菅原氏は「仕方がないこと」と動揺の様子を隠さなかった。
第3極への支持を一身に集め小選挙区での当選から比例での復活当選まで視野に入れていた菅原氏が、一転して不利な戦いを強いられることとなった。
この選挙戦を終始優位に進めたのが自民党の甘利氏だった。
主張貫く
10回目の当選と小選挙区での議席奪還を目指した甘利氏は、政調会長として今回の選挙に挑んだ。解散から投票前日まで、党幹部として全国遊説に奔走。自ら手掛けた政権公約を主張し続け、自民党への支持を呼びかけた。
本人不在の選挙戦を支えたのは選対本部長の長田進治県議(47)=海老名市をはじめ笠間茂治県議(63)=綾瀬市、山本俊昭県議(49)=座間市、藤代優也県議(41)=大和市の県議4人と、各市の公認市議のほか後援会組織。
勝敗ラインを「トップ当選・比例復活阻止」に掲げ、選挙戦を通じて政権公約の立案や経済政策、外交の立て直しなどを甘利氏に代わって訴えた。
16日午後8時6分。大和市内の選挙事務所には支持者ら約70人が集まった。事務所内のテレビで当確の一報が流れると本人不在の中、長田県議を中心に万歳の声が響いた。
藤代県議は「子育て中の主婦から経済の活性化を求められるなど、これまでにない感触や反応が多くあった」と話す。
地元秘書(36)は「批判で票は取れない。批判されても自らの主張を貫き通すのが甘利の戦い」と述べつつ安堵の表情を浮かべた。
黙々と歩く
前回選挙で13万8千票を獲得して甘利氏を破った民主橘氏は、自民優位の中、背水の陣で選挙を迎えた。
解散直後の11月17日から投票日の前日まで、党の広報車や自転車、選挙カーなどには一切乗らず徒歩での辻説法を貫き通した。
維新の会など第3極の結集が進むなか、他党からの熱心な誘いを断り続けた橘氏は「前回の選挙で民主党から立候補してお預かりした議席。ぶれてはならないと強く思っていた」と胸中を明かした。
戦況の劣勢が伝えられるなか「反原発」の旗幟を鮮明にして再度の支持を訴えたが、大きな流れの中ではなす術もなかった。
国会で行動を共にした秘書(35)は「黙々と歩きながら、辻々で自らの考えを訴えるなかで、前回との反応の違いを強く感じていたのが本人だったと思う。時折、弱気な一面も見せたが最後までやりきったと思います」と胸を張った。
16日午後11時過ぎ、選挙事務所に姿を見せた橘氏は「勝ちは偶然。負けは必然という教えを地で行くようなことをやった。皆さんには申し訳ない気持ちで一杯」と支持者に深々と頭を下げ再起を誓った。
選対本部長を務めた池田徳晴市議(63)=座間市は「代議士として活動した期間はわずか3年3カ月間だったが、地元自治体は政権与党にいる地元代議士の存在意義を実感したはず」と橘氏を評価した。さらに「この選挙区に来てまだ5年足らず。しっかりと根を張って次回も挑戦してもらいたい」とエールを送った。
菅原直敏氏
大和市議1期、県議2期目の途中で辞職し「議員生活10年の節目」に初の国政に挑んだ菅原氏は、9月21日にみんなの党からの出馬を表明。11月には県議を辞職し、退路を断って選挙戦に臨んだ。
菅原氏の陣営は、佐藤正紀市議(40)=大和市が選対本部長を務め、昨年の統一地方選で初当選した選挙区内市議5人や元市議を始め、県内外から同僚の議員やボランティアが日替わりで応援に入った。
党が選挙協力を模索していた維新の会が太田氏を擁立した翌々日、綾瀬市内の街頭に立った菅原氏は「時計の針を戻すか新しい政治に託すのか、その選択肢となるために自ら考え、行動している」と声をあげた。
市議1回、県議2回の選挙でいずれもトップ当選を果たしてきた菅原氏は16日深夜、支持者が詰めかける大和市南林間の飲食店で本紙の取材に応じた。
次点ながら、甘利氏とのダブルスコアの現実を前に「初めての負け。政治では初めての大きな挫折といってもいいかも知れない」と飾らない心境を語った。
今後については「年内は毎日街頭に立ち続ける。自分自身の生活基盤を確立しながら、党の総支部長として政治活動を続けていく」と、決意を新たにした。
太田祐介氏
11月21日に日本維新の会からの出馬を表明した太田祐介氏(38)=写真は選挙戦を通じ「国と地方の統治機構変革」を訴えた。
大勢が判明した16日午後10時半過ぎに海老名市内の選挙事務所に姿を見せた太田氏は、開票結果を受け「不徳の致すところ。力不足だった」と述べた。
市議を務めた昨秋以来、1年ぶりに海老名駅で演説し「多くの方に声をかけていただき涙が出る思いだった」と短い選挙戦を振りかえった。
今後については「熟慮したい」と話すに留めた。
宮応勝幸氏
今回、初めて国政選挙に挑んだ共産党の宮応勝幸氏(69)=写真は、TPP反対、原発即ゼロなどのほか、「厚木基地を抱える選挙区の責任」として、基地問題についても積極的に踏み込んだ訴えを行い、12日間の選挙戦を走り切った。
開票結果を大和市柳橋の党事務所で見守った宮応氏は「甘利さんが強いのは織り込み済み」と素直に敗北を認めつつも、投票率が伸び悩んだことについて触れ「政治全般に対する市民からの批判だと思う。共産党の真価が問われるのはこれから。立ち止まっている暇はない」と力強く話した。
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![]() 太田氏
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