徒然想 連載272 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、愚者は財産を自分でも使わず、他人にも与えない。知者は財産を得て自分でも使い(人として)なすべきことをなす、です。
出典は、インド、原始経典、『相応部(そうおうぶ)経典(きょうてん)』です。
この文言には前提となる物語があります。サーヴァッティー(舎衛城)に、ある金持ちがいたが、莫大な財産を残して死んでしまいます。この金持ちは生前には糖を混ぜた酸っぱいご飯を食べ、三切の麻布を綴じ合わせた衣服しか着ませんでした。乗っている馬車といえば天井は木の葉で覆っていました。釋尊はこれを聞いて言いました。「いくら財産があっても、自分を楽しませず、喜ばせず、両親、妻子、友人をも楽しませず、宗教者に布施することもしない。正しく使われないうちに、彼の財産は国王に没収され、盗賊に盗まれ、火に焼かれ、あるいは、自分の気に入らぬ相続人に奪われてしまうのである」。
財産は正しく、しかるべく使われてこそ生きた財産なのであり、せっかくの財産を活用せず、無駄にしまい込んでしまうような人こそが愚か者だと、釋尊は説きます。
また、信者にこう教えています。とくに質素な生活をしろとは言っていない。贅沢でもなく、けちでもない。自分にあった心豊かな生活の実践を。
桃蹊庵主 合掌