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エコチル調査 全国10万人で調査中 環境が子どもに与える影響とは
「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)は、生活環境の中で触れる物質や生活習慣が、子どもの成長や病気にどう関係しているのかを調査・研究している。現在、全国15地域計約10万人の6〜9歳の子どもと両親が参加。神奈川県では小田原市、大和市、横浜市金沢区で行われている。
子どもが健康にすくすくと育ってくれることこそ、保護者の共通の願い。だが近年、先天異常やぜんそく、アトピー性皮膚炎など子どもの疾患が増加傾向にある。病気の多くは環境中の物質・生活習慣・遺伝などが関係しあって起こると言われている。
環境省は生活環境の中で触れる物質や生活習慣が、子どもの成長や病気にどのように関係しているのかを探るため、全国プロジェクトのエコチル調査を立ち上げ。2011年1月から、参加者を募集した。神奈川県では6650組から調査に同意を得た(大和市は約2200組)。
参加者に感謝
期間は妊娠中から子どもが13歳になるまで。年に2回、質問票に回答するほか、8歳の時に対面での検査が行われる。現在開始からおよそ10年たつが、約9割が継続して協力している。
「他の調査に比べて脱落率が低く、開始当初から質問票の回収率も高かった。参加者には感謝しかありません」と話すのは、横浜市立大学内に設置された神奈川ユニットセンターの伊藤秀一ユニットセンター長。地域の関心を維持し、参加者が続けやすい環境づくりを目指す。
「全国規模の調査は珍しいが、大きなデータからしか見えないものがある。ひとり一人の協力の積み重ねがより有益な成果につながる」とその意義を訴える。調査に協力してくれた子どもが父親母親になった未来に、役立つ成果を得ようと調査・研究を続けている。
エコチル調査の研究から
マルチビタミンサプリと先天性形態異常
京都大学大学院医学研究科特定講師 吉田都美
出生時の先天的な疾患のひとつとして口唇口蓋裂がありますが、その要因は十分に知られていません。これまで、口唇口蓋裂には母体の喫煙や飲酒、薬剤などの関連が指摘されていますが、食事や栄養摂取が与える影響については明らかになっていませんでした。そこで私たちは、妊娠期の母体の栄養摂取が子の口唇口蓋裂発症と関連するのかをエコチル調査によって検討しました。
研究は2011年1月から2014年3月までにリクルートされ、エコチル調査に参加した母子ペア9万8787人を対象としました。このうち、234人が生後1か月までに口唇口蓋裂と診断されています。解析の結果、母体の食事内容は児の口唇口蓋裂と関連しなかったものの、妊娠初期のマルチビタミンサプリメント摂取は、摂取しない場合に比べて、お子さんの口唇口蓋裂発生を2〜3倍程度高める可能性があることがわかりました。
妊娠初期は児の器官形成において最も重要な時期ですが、本研究の結果を踏まえると、この時期にマルチビタミンサプリメントを摂取することは避けた方が良いと考えられます。特に近年、二分脊椎の予防のため妊婦の葉酸摂取が推奨されていますが、マルチビタミンサプリメントで葉酸の推奨量を補おうとすると、脂溶性ビタミンの過剰摂取につながり注意が必要です。葉酸摂取目的では、葉酸成分のみのサプリメントを選択する、産婦人科医が推奨するサプリメントを使用されるなどが良いでしょう。
妊娠期に母体が得た栄養は、胎盤を通して赤ちゃんへ移行し、赤ちゃんの細胞を作る重要な働きをします。一方で、普段の食事内容がどの程度、児の発育に影響するのかに関する研究は端緒についたばかりです。エコチル調査では妊娠期の普段の食事内容や栄養摂取についても詳細に調査されているため、今後の研究が期待されます。
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