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徒然想 連載310 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄

公開:2024年1月5日

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徒然想  連載310

 明けましておめでとうございます。

 今年最初の月は慈徳(じとく)の高々(こうこう)たるは簣(き)の功に非ず、平寛(へいかん)と孤峻(こしゅん)、そこにありです。

 出典は室町代、夢窓疎石(むそうそせき)、偈頌(げじゅ)。

 意は、それは少しずつ積み上げていくようなものではなく、元より限りなく高い慈愛と徳があり、穏やかさと気高い峻厳さを兼ね備えている、ということです。

 これは、夢窓疎石が将軍足利尊氏に「仁山(にんざん)」という道号(僧名)を与えた時、尊氏を讃えた偈頌(詩)の前半部分です。疎石は後に「乱に因りて徳(おも)いを書す」と題する、尊氏を批判した偈頌も書いているが、ここでの賛辞は同一人物を詠んだものとは思えないほどの褒めようです。

 「簣」とは、土を運ぶための竹籠のような物で、「簣の功」とは、少しずつ土を積み上げるような弛(たゆ)まぬ努力をして培うことを言うのでしょう。つまり、尊氏の慈徳の高さは天性のものだというのです。

 後半に「この峰は衆人の仰ぐことを望まざれど、ただこれ衆人この峰を仰ぐ」と詠っている。

 建武の中興の功高く、この当時の人々の尊敬と信頼が集まっていた状況がよく理解できる。

桃蹊庵主 合掌

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