徒然想 連載316 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、「吉日(きちにち)に悪をなすに必ず凶なり。悪日(あくにち)に善を行うに必ず吉なり」といえり。吉凶は人によりて、日によらず、です。
出典は 鎌倉代、吉田兼好『徒然草』第九十一段より。
意は、昔から「吉日だからといって悪事をなせば、必ず悪い結果に終わる。逆に凶の日であっても善事を行えば、必ず善い結果を生ずる」と言われている。吉とか凶とかいうのは、その人の行為の善悪に基づくもので、吉日とか凶日があらかじめ決まっているのではない、ということです。
中国から「陰陽道」と共に入ってきた日時を吉凶で区別する考え方は鎌倉時代にもあったようですが、「大安」や「仏滅」と言って、暦の上で日柄(ひがら)の吉凶を区別する六曜が現代の形に定着したのは江戸時代末期からのこと。
行為の結果は、日の善し悪しとは無関係で、それを行う人の問題であるのだから、日ごろから善い行いを心掛けることが大切だと教えているのです。
秀でた歌人だった兼好ですが、世の無常を感じて出家しました。そして、地位や名誉などより自分の心が豊かであることの方が大切である、と説いています。
桃蹊庵主 合掌