戦時中に台湾少年工として高座海軍工廠で戦闘機の製造などに従事した東俊賢さん(94)が14日、大和商工会議所で講演を行った。この講演会は東さんが希望し、日台高座友の会(橋本吉宣会長)が主催して行われた。終戦から今年で79年。94歳となった元少年工は「自身の経験を後世に伝えたい」と来日した。
東さんは1930年、台湾に生まれた。44年に高座海軍工廠に配属後、横須賀市の海軍航空技術廠に派遣され、溶接工としてロケット特攻機「桜花」やロケット戦闘機「秋水」の試作などに携わった。
講演では、14歳で海を渡り初めて日本にやって来た時のことにふれ、「喜んで訪れた大和駅は、とても小さな”田舎駅”だった」と述懐した。少年工として特攻隊員と顔合わせした日のこと、今もなお続く日本人との交流のエピソードなどを、当時のモノクロ写真を交えながらおよそ50分間にわたり語った。
用意された椅子に座ることなく、マイクを握り熱弁する東さんを気遣い、同会の橋本会長が着席と給水を促す一幕も。すると東さんはミネラルウォーターを指さし「昔の少年工はこれを飲む機会も少なかった」と明かし、会場を沸かせた。
講演後、花束を贈られた東さんは「皆さんも台湾にいらしてください」と100人の来場者に笑顔で呼びかけた。取材に対し、東さんは「また大和で講演を」と語った。
今回の来日にあたっては、年齢を考慮し東さんの家族は当初反対したという。橋本会長は「『あと何回講演できるか』という切実な思いを持って講演された。大変ありがたいこと」と述べた。
会場で東さんの話を聞いた岡温子さん(59)は「東さんはまさに歴史の語り部。とても貴重なお話を伺えた」と振り返っていた。
この日は、東さんが終戦後、台湾で小学校の教師をしていた時の児童だった王克雄さん(79)も登壇した。検察官だった父の王育霖について講演した。