東京・国立代々木競技場第二体育館で4月22日(土)、格闘技の「K-1ワールドグランプリ2017ジャパン〜第2代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント〜」が開催される。国内外の8選手がタイトルを賭け、一発勝負の戦いに挑む。大会では、勝ち上がった選手や出場予定の選手が怪我などによりドクターストップがかかった場合、不戦敗を防ぐため、リザーブ(予備)選手が待機する。このリザーブ選手を決める試合が、大和にゆかりの2選手で争われることになった。両選手の横顔や試合前の心境について話を聞いた。
何でもできるテクニシャン
鈴木優也選手は横浜生まれの29歳。結婚を機に、昨年から大和に住んでいる。
中学の時にボクシング漫画『はじめの一歩』を読んで、ボクサーに、そしてチャンピオンに憧れを抱くようになった。「危険」と両親に反対されたが、独学でトレーニングを始めた。高校では「あまり興味はなかったが、ボクシングのためになれば」と少林寺拳法部に所属。始めるとすぐに頭角を現し、2年生で全国大会に出場、3年生で2段を取得し、全国大会の決勝では前年覇者と対戦。同点だったが、規程により惜しくも準優勝となったものの、全国にその名をしっかり刻んだ。
部活を引退するとすぐにキックボクシングのジムに通い始める。さすがの両親も少林寺拳法で実績を残していたので、この時ばかりは反対しなかった。当時K-1で活躍していた魔裟斗選手の姿に、自分を重ね合わせた。「あのリングに上がる」。格闘家として歩む目標が決まった。
アマチュアで20戦して無敗。2009年にプロに転向、現在は都内のK-1ジム目黒チームタイガーに所属する。怪我で苦しんだ時期もあったが、現役で戦う今を第1の人生と捉え、「チャンピオンになる。ベルトを取る」を目標に掲げる。
身体のケアのため鈴木選手が通うボディケア(市内中央)の相澤博さんは、関節の柔らかさと身体のパーツの重量感に驚くという。「これで殴られたり蹴られたりしたら…」と想像して苦悶の表情を浮かべる。昨年秋から通うSTBジャパン(市内林間)の鈴木友幸代表はアマチュア時代の鈴木選手の先輩。「テクニシャンで努力家。なんでもできる選手」と評する。「勝ち負けよりも次につながる試合をしてほしい」とエールを送る。「周りの応援の声で『生きているなぁ』と実感できる」と話す鈴木選手。大和からの応援で、力漲るリングまであと少しだ。
空手にしかできない必殺技
一方の伊澤波人選手は茅ケ崎出身の24歳。父に「何か一緒にやろう」と誘われ、幼稚園の年長の時から通い始めたのがフルコンタクトカラテスクール(市内鶴間)。小学生の時は週に1回だったが、中学に入ると毎日、休みなく通うようになる。
小学1年生の時、東京ドームで開催されたK-1GPに連れて行ってもらった。ピーター・アーツやジェロム・レ・バンナといったスター選手がリング上でカクテル光線を浴びる姿に、一瞬で魅了された。中学3年で空手の全日本ジュニア日本一になると、高校からキックボクシングをはじめ、2年生でプロデビューを果たした。単位制の高校に通いながら多い時で1日4時間の練習を自らに強いた。空手で培った蹴り技が得意で「誰にも負けない自信がある」と豪語する。現在はK-1ジム相模大野クレスト(相模原市)に通い、1年前からはKGボクシングジム(市内中央)でパンチ力に磨きをかけている。
フルコンタクトカラテスクールでは19歳の時から、子どもたちのクラスの指導者としての顔も持つ。「教えることで基本に戻れ、説明することで技を見つめ直せる」と前向き。スクールの佐野貴美子代表は「子どもたちと同じ目線で、強い子にも弱い子にも平等に声をかけてくれるので、人気がある」という。「成長している姿を見ているので応援してあげたい。戦っている姿を見ると胸が熱くなる」と視線は我が子を見るようだ。
長年、道場に通っていることから大和市内の飲食店や整体院など繋がりが増え、皆が応援してくれている。「応援してくれる人の幅が広すぎて…皆、格闘技ファンなんです」と嬉しそう。「大和は僕のふるさと。勝利を持って帰り、一緒に喜びを分かち合えたら」と内なる闘志に火をつける。
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リザーブの試合は、勝っても本選に欠場者が出ない限りチャンスはこない。それでも2人は「第2の故郷・大和」で応援してくれる人たちのため、目の前の勝利に向け全力を尽くす。