徒然想(つれづれそう) 連載 265花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
この月は春の盛りを感じさせ、生気あふれる月でもあります。
今月は「老母の然(とも)す所の一灯は光明特に朗に、殊に勝れて夕(ゆう)を通じて滅せず」。出典は中国、西晋(せいしん)、法炬(ほっこ)訳『阿闇世王授決経』(あじゃせおうじゅけっきょう)。
意は「貧しい老女の献じたささやかな灯は、夜通し消えず、他のどんな灯明にも増して光り輝いていた」です。阿闇世(アジャータシャトル)王はジュータワナ(祇園)に滞在中の釈尊に施食などを供養し、さらに医師のジーヴァカと相談して、万灯を献じようと多量の麻油膏を祇園精舎に運ばせました。この時に一人の老女がいて信心篤く、仏に供養しようとしましたが手に何もありません。人に乞うて得たわずかな銭をすべて出し、王にならい灯を献じようと油を購入しました。油商人は貧女の篤信に感じ入り二合の金に対して三合を足して売りました。彼女は五合の油をもって仏前に至り「わずかな油量なので、すぐ切れるだろうが、自分が後世成佛できるのであれば」と、夜通し消えないように祈りました。老女の一灯は朝まで消えなかったといいます。
この事は、真実の信仰から発した布施の功徳は無量(むりょう・はかり知らないほど多い)ですと、教えています。桃蹊庵主 合掌
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